ITがビジネスの成長を加速させる時代へと変わりつつある。ITを武器に新たなビジネスモデルを展開する欧米企業との競争が激しさを増す中で、国内でもITの活用度によって企業力に大きな格差が生じている。勝ち組となるために経営者はどう対応するべきなのか。IT活用の最新動向に詳しく、ダイヤモンド・オンラインで「経営のためのIT」を連載中のITR内山悟志氏に話を聞いた。
守りのITから攻めのITへ
何が分かれ目になるのか
ITに対して戦略的な投資をしている企業ほど、業績は好調である――従来から言われてきたIT活用力について、勝ち組と負け組の差が明らかになりつつある。
プリンシパル・アナリスト
内山悟志氏大手外資系企業の情報システム部門などを経て、1989年からデータクエスト・ジャパンでIT分野のシニア・アナリストとして国内外の主要ベンダーの戦略策定に参画。1994年に情報技術研究所(現ITR)を設立し、代表取締役に就任。現在は大手ユーザー企業のIT戦略立案・実行のアドバイスおよびコンサルティングを提供する。
「もともとITは企業活動を支える存在ですが、クラウドやビッグデータ、モバイル、ソーシャルなどが注目されるようになって、ITをビジネスの武器にできているかどうかで、格差がより鮮明になっています」とITRの内山悟志氏は語る。業績が「非常に好調」と答えた企業ほど戦略投資の比率が高いという同社の調査結果もある。
しかし、実際にはITをビジネスの武器にする“攻めのIT”を実現している企業は少ない。同社が毎年実施している「IT投資動向調査2015」のIT投資目的のポジショニングを見ると、重要度が高く、かつ「攻め」が強く意識されている項目は1つも存在しない。重要度が高い項目は「コスト削減」や「ITインフラの整備」など“守りのIT”のためものばかり。「事業・業務変革」や「新規ビジネスモデル実現」などの攻めのITのための項目の重要度は低い。
「この調査はIT部門長を対象にしたもの。攻めのITにシフトしたいが、守りに対する負荷が重くのしかかっているというIT部門の現状が反映されています」と内山氏は解説する。ビジネスを成長させたいと考える経営者にとっては悩ましいところだろう。実際に、経営トップのITに対する意識が高くても、IT部門が対応できていない場合や、ITでビジネスをどう変革していくのか思いつかないという場合には、攻めのITは実現できない。
内山氏は今年5月に経済産業省と東京証券取引所が公表した「攻めのIT経営銘柄」選定委員会の委員も務める。そこで選ばれた18銘柄の過去10年間の株式の運用成績は、日経平均株価の伸びの約1.2倍。ITによる企業間格差は広がりつつあるのが現状なのだ。
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