遅れが目立つ
企業の介護支援制度

法定外福利厚生費全体が緩やかに減少している中、ヘルスケアサポートやレクリエーション活動への援助を増やして「従業員の健康に配慮している」ことを示すことが企業にとって重要になってきている

 福利厚生制度の充実は、社員のやる気を高め、活躍を促すきっかけにもなる。ハイパフォーマーを育成し、会社全体の競争力を高めるためにも、福利厚生の最適化は重要な取り組みだ。

 そのためには、安心して長く働ける環境づくりの一環として、両立支援やメンタルヘルスサポートなどの施策を充実させることも大切だろう。

 しかし、両立支援の現状について、西久保教授は「育児休業などの子育て支援はかなり充実してきましたが、介護支援については、必要性を十分に理解している企業が少なく、取り組みが遅れています」と語る。

 右下のグラフは、主な法定外福利厚生サービスの費用が、1997年度から2013年度の間にどれだけ増減したのかを、変動額と変動率で示したものだ。育児関連の費用が大幅に増えたのに対し、介護関連費用は減少している。

育児関連やファミリーサポートなど、子育て家庭へのバックアップが手厚くなっている一方、かつては代表的な福利厚生だった住宅関連やレクリエーション施設などへの援助は減っている
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「実際には、晩婚化とともに子育てと介護の時期が重なり、負担が2倍、3倍になっているようなケースもあります。実情をきちんと捉えて有効な策を打たないと、貴重な戦力を台無しにしてしまうかもしれません」と西久保教授は警鐘を鳴らす。

 一方、メンタルヘルス関連では、今年12月から、従業員50人以上の全ての事業所に対してストレスチェックが義務化されることが決まっている。

「大企業を中心にメンタルヘルスサポートプログラムの導入件数は増えていますが、過労自殺などの件数は減っておらず、施策が十分に機能していないのではないかと思われます。ストレスチェックが義務化されるのをきっかけとして、もう一度、社内のメンタルヘルス支援制度の見直しを図ってみるべきではないでしょうか」

 また最近の傾向としては、ハコもの投資が減る一方で、地方の学生を採用するため、ワンルームマンションなどを社宅代わりに借り上げる企業も増えているようだ。賃貸契約や家賃の支払いなどをアウトソーシングして、業務の効率化と同時に社宅運営のコスト削減に成功している企業もある。

 西久保教授は「アウトソーシングの活用は、投資額を抑えつつ、投資効果を最大化できる有効な手段だと思います」と評価する。

 人手の確保という深刻な経営課題を限られた予算で解決するためには、抜本的な制度の見直しが不可欠だと言えそうだ。