経営者は、自分が何を
やりたいかを理解すること

徳力 今、中小企業でも市場がグローバル化しています。海外に進出したいという経営者は多いのですが、実情はまだ厳しい。チャレンジはするけれど、日本でのもうけを海外で使ってしまうというケースが多い。意外とカントリーリスクを考えてない人が多いような気もします。

伊藤 そもそも海外進出は難しいものなのです。米国でも、輸出をしている企業は全企業の1%ほど。つまり一握りの大企業だけで、中小企業が出ていくのは米国でも難しい。ただし海外との関わり方はいろいろあります。震災復興に励むある東北の水産加工業者は、ホタテやカキを味付けして台湾に輸出したら爆発的に売れた。また福山市(広島県)にあるカイハラというデニムの会社は、ユニクロのジーンズとなって世界中で売れている。つまり自ら海外に出ていって生産しなくても、オンリーワンの技術や、尖ったものを持っていれば、販売の仕組み自体がマーケットを世界中に広げてくれるのです。

徳力 こうした時代の中で、中小企業の経営者に求められる資質とは何でしょうか。私の地元は京都なのですが、京都の老舗企業も後継者不足が深刻で、娘さんの縁談の相談を受けたりします(笑)。若い経営者には、人材育成など社員を大切にするという人が多くなっていますが、本音ベースでは違う部分も見え隠れする。そんなとき私は「本音と建前があるのは当たり前で、それでも経営者を演じ切ることだ」としか助言できないのですが。

伊藤 マーケティングの大家であるフィリップ・コトラーは、マーケティングとはモノを売るための手練手管ではなく、「自分のバリューや価値観を理解して、それを顧客と共有することだ」と言っています。つまり、自分が何をやりたいかを理解することが大切だという。そのためにも経営者は、異業種へのネットワークをどんどん広げていくべきで、ダイヤモンド経営者倶楽部のような存在が有意義になってくる。広い視野の中で常に自らを見つめ直す、そんな姿勢が必要だと思います。

ダイヤモンド経営者倶楽部とは
日本経済の活性化に貢献する趣旨の下、次世代産業の中核を担う中堅・ベンチャー企業経営者の支援を目的としてダイヤモンド社が設立。現在の会員数は500人を超える日本有数の経営者倶楽部。