一つの番号を安全に
共有するための仕組みとは
それはこういうことだ。従来の行政サービスのように、情報や、それにアクセスするための番号がサービスや機関ごとに縦割りになっていれば、万が一どこかの情報が漏れたとしても、その他の情報が芋づる式に盗まれてしまうリスクは低い。
個々の手続きは煩雑でも、それぞれの情報は機関ごとの壁で仕切られているので、セキュリティ面では非常に有効だ。
これに対し、一つの個人番号でさまざまなサービスにアクセスできるようになると、ワンストップの利便性は享受できるが、一つの番号から芋づる式に情報が漏れるリスクはどうしても高まってしまう。
この二律背反を解決し、利便性と信頼性を兼ね備えた基盤としてマイナンバー制度を機能させるため、国と各地方自治体は目下、マイナンバーとそれにひも付く特定個人情報を強固に守るためのセキュリティ体制を構築している。
その仕組みを大まかに説明すると、(1)「見える個人番号」(ヒューマンリーダブル)と「見えない個人番号」(マシンリーダブル)の併用、(2)「見えない個人番号」に基づいて機関別符号を生成して、サービスを提供する機関の特定個人情報と照合──という流れになる。
国民一人一人に与えられるマイナンバーは12桁の「見える番号」だが、これとは別に、マイナンバーのシステムでは機械でしか読めないように複雑化、暗号化された「見えない番号」が使用される。
12桁のマイナンバーがそのまま個人情報の照会に使われるわけではない。
また「見えない番号」も、そのまま照会に使うのではなく、機関ごとに機関別符号を生成する際の鍵の役目を果たす。その機関別符号を開いて、ようやくそれぞれの機関の個人情報と照合できる仕組みになっているのだ。
しかも、機関ごとに異なる符号を生成し、これを経由して照会がなされるので、さかのぼって「見えない番号」や「見える番号」(マイナンバー)にたどり着くことはまず不可能である。
残念ながら、こうした仕組みを整備していることは国民にあまり理解されていないようであり、一層の広報に努める必要がある。