顧客をパーソナライズした
マーケティングの成功例
顧客体験の変革、顧客との新しい関係づくりに向け、一歩を踏み出す企業や組織は増えつつある。
ハワイ州観光局は日本人を対象とする新しいマーケティング活動で成果を上げている。ハワイの観光産業にとって日本人は重要な顧客。日本からの観光客は14年に年間145万人だったが、同局は誘致数を200万人に拡大する目標を掲げ、「IBM Campaign」を用いた「デジタル・ツーリズム・プラットフォーム」を構築した。
「ハワイ州観光局は日本でハワイをご紹介するイベントを開催しています。ご案内に際して、これまでに取得したお客様情報を活用しようにも、以前は情報が散在した状態でした。そこで、こうした情報を統合管理して分析し、パーソナライズされたメールを配信する仕組みを導入しました」
一斉に同じ内容のメールを送っていた時期と比べると、顧客の反応は大きく改善した。例えば、ある外食企業と「アンケートに答えるとハワイ旅行が当たる」というキャンペーンを共同で実施したところ、従来3万人弱だったメルマガ読者は30万人へと一気に増えた。
「メールの送り方も変わりました。アンケートでハワイへの渡航回数を聞いた上で、回数に応じたコンテンツを提供するようにしたのです。回数がゼロの方には最も人気の高いオアフ島の情報、1?2回の方にはマウイ島など、5~6回というヘビーリピーターにはハワイ島などのよりディープな情報を伝えるというやり方です」(浅野氏)
渡航回数という切り口でパーソナライズしただけだが、効果は大きかった。メールの開封率は観光業界平均の2倍近い35%、リンクのクリック率は1%に満たないのが普通だが、このキャンペーンでは6%に達した。
もう一つは海外の大手小売企業の事例である。同社は以前から顧客の購入履歴などをもとに、レコメンドメールやDMなどを送付する販促活動を展開していた。ただ、対象は購入経験者に限られていた。店舗商品を眺めただけ、あるいは同社のECサイトを訪れたが購入に至っていない顧客にはアプローチのしようがない。
「そこで、同社が着目したのがECサイトの『買物カゴ』です。いったんカゴに入れたけれど、購入の直前で気が変わったり、忙しくてカゴに放置したというユーザーは、少なくありません。そんな人たちを対象に、『IBM Silverpop』という製品を用いてパーソナライズされたメールを送付しました。結果は、開封率、クリック率ともに、通常のメールよりも相当高い数値を記録しています」と浅野氏は言う。
IBM社内でも実践する
デジタルマーケティング
IBMは、これらの企業・組織に対してコンサルティングやシステム構築などを通じてマーケティングの支援を行っている。
「デジタルマーケティングの進化により状況は大きく変わりました。効率的に『見るべきものを見る』ための環境を実現できるようになったのです。また、クラウドの普及により、スモールスタートも容易になりました」
IBMは、図に示す4つの領域で「マーケティング×IT」の取り組みを支援する。マーケティングオートメーション、デジタルクリエイティブ、データ分析、セールスとの連携である。
「当社はマーケティングにおけるITの活用をトータルにサポートしています。当社が自社内で構築したシステムやプロセスを、お客様にお見せする機会も多い」と浅野氏。例えば、どのように潜在顧客の関心を高め、営業チームに引き渡しているのか。IBMが実践している具体的な手法、あるいはマーケティング施策の効果などを示した画面などを紹介しているという。IBM自身もまた、デジタルマーケティングの先進事例の一つである。
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