2016年4月1日から、電力小売りの全面自由化がスタートする。これによって何が変わるのだろうか?

 まず、さまざまな事業者が電気の小売市場に参入してくる。それによって消費者が、電力会社を自由に選択できるようになる。これが一番大きな変化だ。

新しく自宅に
電線を引く必要はない

 これまで日本では、10社の電力会社が市場を独占してきた。北海道電力なら北海道、九州電力なら九州と、それぞれ独占的に電力供給を行う地域を持っていた。そこには競争がなく、消費者はその地域の電力会社と契約するしかなかったわけだが、その大前提が崩れることになる。

 もう一つは、それぞれの事業者が顧客を獲得するために創意工夫を凝らすことで、サービスの種類や内容が多様化し、セット割引やポイント制が導入されたり、料金メニューの幅が広がったりする可能性があるのだ。

 電力会社を変更すると、新しい電線が自宅に引かれることになるのでは?という疑問も生まれるが、実際には電力会社が変わっても、現在の一般電気事業者が管理・運営する既存の送電線・配電線を経由して電気が送られてくるので、新しく自宅に電線が引かれることはない。切替えを希望する場合は、小売電気事業者に連絡すれば、スマートメーターへの取り替え工事が必要になるだけで、それほど手間はかからない。

 つまり消費者は、各社のサービス内容をじっくり見極めた上で、比較的手軽に電力を選択することができるようになる。ちなみに現在、小売電気事業者には異業種が相次いで参入しており、ガス会社や石油元売り会社などのエネルギー関連企業をはじめ、総合商社や通信会社、ポイント発行会社などが、名乗りを上げている。11月24日現在で、登録小売電気事業者は66になる。

再生可能エネルギーの
電気を買う自由も

 消費者にとって、今回の自由化で注目するのは、やはり電気料金の価格だろう。東日本大震災後、全国では電気料金の値上げが行われた。消費税増税など、生活コストも上がっている。消費者は電気料金に敏感であり、みずほ情報総研が行った調査によれば、「約6割の消費者は1000円料金が安ければ電力会社を乗り換える」というデータもある。

 その一方で、電源の構成を重視して購入しようという動きもある。

 例えば、「再生可能エネルギーなど、環境に優しい電力を購入したい」という消費者の存在である。小売電気事業者は、一定の電源の構成(例えば再生可能エネルギー100%など)を供給条件として、電気を販売する際には、契約時に電源構成の内訳を説明する必要がある。消費者にとっては、多様な電源から電気を選択し再エネに貢献する自由も得られるのである。