消費税増税前に
求められる大胆な策

 アベノミクスの下、日銀により年間80兆円にも及ぶ未曽有の金融緩和が行われている。理屈の上では企業が金を借りやすくなった。

 しかし、銀行が融資を増やした、という話は聞いていない。首相が頼みにする一人勝ちの輸出企業は、利益を設備投資に回すどころかため込むばかり。内部留保の額は354兆円と過去最高まで膨らんだ。個人の金融資産も1708兆円に達している。金は滞留しているのだ。

 そうなるのも道理で、この「失われた20年」の間に、企業も個人も「金を使わない」ことが常態化してしまった。先行きへの警戒感がそうさせたのだ。アベノミクスで少々株価が上がっても、不透明感と不安感がこんなに強くては、とても使う気にはなれない。

 このマイナスの心理、連綿と続く負の遺産に、学者も政府も気づいていない。異次元の金融緩和だけでは、ここまで冷却凝固した国民の心理は解きほぐせないのだ。

(出所)オウチーノ総研調査:2015年11月19~22日、インターネットによるアンケート調査(有効回答数:20~59歳男女1109名)

 こうした事態を打開し、経済の停滞にピリオドを打つ策の一つとして、私は来年早々にでも、住宅取得にかかる消費税を元の5%に戻すべきだと考える。

 何も、世界の先進国のほとんど全ての国々が、住宅取得時にゼロ税率ないしは軽減税率を適用しているのに……などと筋論をかざしているわけではない。直近の大胆で明快な住宅政策こそ、経済回復の牽引役となると確信しているからである。

 ところが困ったことに傾斜マンション問題も、住宅取得の消費マインドを冷え込ませている。

 かつて、三井不動産の中興の祖と呼ばれた江戸英雄と旭化成の宮崎輝は、刎頚の友だったという。偉大な先人に敬意を表し、後継の各社は本気で信頼回復に打って出てほしいと願っている。

 要は総力で消費マインドを盛り上げることだ。そのために国民の皮膚感覚に響く、明快で前向きな施策が待ち望まれている。

 

■オウチーノのホームページはこちら

 

magazine

この記事が収録されている「週刊ダイヤモンド」別冊 2016年1月17日号『2016年新春 住宅購入 最新事情』の詳しい内容はこちらからご覧いただけます。

新築マンション、戸建て関連の最新情報をお届けしている特設サイト『2016新春 マンション・戸建て市況を読む Online』もあわせてご覧ください。
物件資料を無料でご請求いただけます。