中小企業が厳しい経済環境に置かれている現在、持続的成長に向けて収益の拡大を図っていかなければならない。一方で、競争力の源ともいえる従業員の力を最大限に発揮させるために、多様な働き方に対応していくことも必要だ。スマホやクラウドなどのITを活用し、社内や顧客・取引先とのコミュニケーションをいかに円滑に行うかが企業成長のカギを握る。
リピートの顧客を増やすことで
戦略的なビジネスが生まれる
グローバル競争がますます激化する中、日本企業は変革を迫られている。自らを変えることに失敗した企業は、市場からの退場を余儀なくされることも少なくない。十数年前まで「一流企業」と呼ばれていたにもかかわらず、いまやすっかり影を潜めてしまった企業も目に付く。
変革の波は、もちろん中小企業にも押し寄せている。かつて右肩上がりの時代には、大企業の下請けとして成長の恩恵に浴していたものの、すでに大企業自体の余力がなくなっている。新興国企業との価格競争に巻き込まれるなどで、多くの中小企業の経営はますます逼迫してきている。
上村孝樹氏「日経情報ストラテジー」「日経アドバンテージ」(共に日経BP社)などの編集長を経て2005年に独立してフリーに。東京商工会議所IT推進委員会委員、経済産業省IT経営応援隊「IT経営百選」選考委員会委員長などを歴任。事業創造大学院大学の客員教授も務める。
そんな中で「中小企業が生き残るためには、下請けから脱却し、付加価値の高い独自の製品・サービスを持つことで産業構造の変革に対応する必要があります」と、中小企業の経営に詳しい上村孝樹氏は述べる。しかし一方で、資金や人材にあまり余裕がない中小企業にとって、思い切った施策はなかなか打ち出しづらい。ではまず何から手をつければいいのか。
「ビジネスの究極は人間関係であり、その基本はコミュニケーションです。社内や顧客とのコミュニケーションをきちんと把握する仕組みをつくり、顧客からのクレームなどに素早く対応する。そして、リピートの顧客を増やすことで戦略的なビジネスが生まれます」と上村氏はアドバイスする。例えばあるビルメンテナンス会社は、顧客への電話対応に関して、ユニークな「15分ルール」を設けることで、サービス価格を下げることなく、収益を生み出す企業体質をつくり上げているという。
スマートフォンを持つ人が大多数を占めるほどにモバイルが発達した時代、コミュニケーションのあり方も大きく変化してきている。そんな中で注目したいのが、「スマホの内線化」だ。これは文字通り、社員貸与や個人使用のスマホを内線電話として活用するというもの。通話料金が削減できるだけでなく、社内外のコミュニケーションを活性化し、社員の働き方まで大きく改善できる可能性を秘めている。
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