海外の医学教育では英語での医学課程を提供するところが多くあり、卒業後、世界をフィールドに活躍の場を広げることが可能だ。先進医療や研究を、海外で磨いた英語力で発信できるのは、グローバル時代の医療分野で大きな魅力となる。海外事情に詳しい木曽功・内閣官房参与に話を聞いた。
内閣官房参与
1952年生まれ、東京大学法学部卒。文化庁文化財部長、文部科学省国際統括官、ユネスコ日本政府代表部特命全権大使などを歴任。現在内閣官房参与、公益財団法人海外医学生支援協会理事長。
「日本の国立大学医学部は、世界的に見ても難易度が高過ぎ、では私立大学医学部はというと、学費が高く、経済的に厳しいという学生には他のオプションがないというのが現状です。医師になって人を助けようという意志があり、相応の学力を持つ学生たちにチャンスが与えられていないと感じています。地方における医師不足は特に深刻で、規制に守られた医療制度にも課題があるのではと思うのです」と語るのは、旧文部省で医学教育課長の経歴も持つ内閣官房参与の木曽功氏だ。
現在、海外の医学部では、英語プログラムによる医学教育を実施し、広く留学生を受け入れている大学がある。
「こうしたプログラムに日本人学生が参加するのは大いに賛成です。医学を英語で学ぶことは、グローバル化が進む世界の中で活躍できることを意味し、真の意味で国際貢献ができる医師になることができるからです。世界には、EUと米国の大きく二つの医学基準があり、日本はそのどちらでもありません。事実上“たこつぼ”化しています。
また、海外に住む日本人も多いのですから、海外の大病院で働く日本人医師の姿が少ないのは、寂しいと思います」と木曽氏は語る。
最近はアジアの都市で、巨大な資本投下によってグローバルスタンダードの大病院が開設されている。
優秀な医師たちが世界中から集められ、最先端の医療を施し、それが成長分野であるメディカルツーリズムを生み出すという潮流がある。
「世界に通用する医師になる」――その一点だけでも、海外の医学部で学ぶ意義はあると木曽氏は言う。
「今、若者は内向きであまり海外に出ようとしない。ビジネスの世界もそうだが、グローバリズムの波の中で、日本人だけが閉じこもっているわけにはいかないのです」
グローバル・ドクターの時代が来ている。わが子の将来の選択肢の一つに、海外医学部への道を加えてみてはどうだろう。