省エネやエコな生活を実現するには、何かを我慢しなくてはならない──。そんなイメージは、今はもう昔の話。省エネと創エネ、高効率設備の組み合わせでエネルギー収支をゼロにする「ゼロエネ住宅」は年々進化を遂げている。導入例も急増し、快適で経済的で災害にも強いという、その実像を探ってみた。

ゼロエネハウスZEHは
2020年のスタンダード

ユニバーサルデザイン総合研究所
代表取締役所長
赤池 学

1981年、筑波大学生物学類卒業。社会システムデザインを行うシンクタンクを経営し、ソーシャルイノベーションを促す、環境・福祉対応の商品・施設・地域開発を手掛ける。科学技術ジャーナリストとして執筆、論評、講演活動も。2011年より、ZEH支援事業も展開する(一社)環境共創イニシアチブ代表理事。

 1973年の第1次石油危機以降、日本のエネルギー消費量は、産業部門では各企業の省エネなどの努力により2割近く減少している一方で、家庭部門では2倍に増加。日本のエネルギー需給を安定させるには、家庭部門の対策が必要不可欠として、国はZEH(ゼッチ)を推進している。

 ZEHとは、「Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」の略称で、最新の省エネ・創エネ技術に高効率設備を組み合わせ、家庭における一次エネルギー(注1)消費量を正味(ネット)でおおむねゼロ以下とする住宅のこと。国は2020年までにZEHを標準的な新築住宅で実現、30年までに新築住宅の平均とすることを目指している。

「政府のZEH支援事業(補助金)の交付件数も、ここ4年で急激に伸びており、ZEHがスタンダードになりつつあることを実感しています」と語るのは、エネルギー問題に関する政策提言などを行う環境共創イニシアチブの代表理事・赤池学氏。ZEHの実像について、さらに詳しく聞いてみた。

(注1)石油や天然ガスなどの化石燃料や水力など、自然界に存在するものから得られるエネルギー。一次エネルギーを加工して作られる電力などは二次エネルギーと呼ばれる。