【雨粒御伝(あまつぶおんでん)巡り】島根県松江市
雨の多い松江での観光をいかに
楽しんでもらえるかを考えた。

8体の地蔵を巡りながら、
城下町の清掃活動を行う

雨の多い島根県松江市での観光をいかに楽しんでもらえるかを考え、幸運をもたらすという「雨粒御伝」を城下周辺に8体設置し、「雨粒御伝巡りと城下町清掃」プログラムを実施

 地域に新たな観光名所を生み出すというユニークな取り組みもある。15年11月7日に実施された「松江城国宝指定記念 雨粒御伝めぐり&城下町清掃」がそれだ。松江市は縁結びの地として知られているが、実は水の都でもあり、“雨の似合うまち”という側面も持つ。JTB中国四国松江支店の宮木敏行氏はこう説明する。

「2年前より地元観光協会や地元企業と共に、雨の多い松江での観光をいかに楽しんでいただけるかを考え、縁結びと併せて幸運をもたらす『雨粒御伝(あまつぶおんでん)』という石像を城下周辺に8体設置しました。新たな観光名所にするため、どう告知していくかを考えました」

「縁雫(えにしずく)」と名付けられた松江に降る雨をたっぷりと吸い込んだ8体の「雨粒御伝」を参拝しながら、松江の城下町を清掃して回るというプログラムをJTBグループは企画。大勢の参加者が集い、秋に修繕が完了した松江城内の重要文化財「興雲閣」も体験会場に選ばれ、新観光スポットのPRにもつながった。参加者のみならず、地域の住民からも喜びの声が出ている。

「地元にいるのに『雨粒御伝』の存在を知りませんでした。お地蔵さんがあるなとは思っていましたが、その意味を初めて知ることができてよかったです」(松江市在住の40代男性)

一連の活動が評価されて
「KAIKA大賞」受賞

 一連の活動は、第三者からも評価されている。一般社団法人日本能率協会(JMA)主催の「KAIKA Awards 2015」で、「KAIKA大賞」を受賞した。「『JTB 地球いきいきプロジェクト』を通じた人づくりと社会価値の創造」がその受賞テーマである。
 同賞は「個の成長・組織の活性化・組織の社会性」を評価するものであり、「KAIKA大賞」は、同賞の創設後初めての選出となる。
 審査委員である水上武彦氏(クレアン CSVコンサルタント)は同活動を「JTBは、人々の交流を創造し、平和で豊かな社会を築くという『パーパス・ステートメント』を掲げていますが、『JTB地球いきいきプロジェクト』は、それを体現しています。また、従業員の能力・意識向上、グループとしての一体感醸成、地域活性化と、パーパスに向け、個人、組織、社会を統合する価値を生み出している点でも優れています」と評価している。
 JTBグループならではの活動の今後の進化が期待される。