植田 統 弁護士
1981年、東京大学法学部卒業後、東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)に入行。その後、ブーズ・アレン・アンド・ハミルトン(現PWCストラテジー)、アリックスパートナーズなどを経て、2010年、弁護士登録。14年、青山東京法律事務所を開設

「今、相続を巡る争いが増えているのは、親が子どもより多くの資産を持っている時代だからです。親は持ち家、子どもは借家の場合が多い。相続は、世相と人生を反映します」

 こう語るのは、青山東京法律事務所の植田統弁護士だ。相続は誰もが避けて通れない法律問題だが、実際に直面してみるまで、その大変さに気づかない。

「遺産と相続にまつわる問題には、税務や金融、不動産が大きく関係してきますので、すべての分野に精通する弁護士を選ぶべきです。私は相続を税務の面から捉え、税負担を最小限にすることを第一に考えています」

 植田弁護士は、メガバンク、資産運用会社、外資系コンサルティング会社勤務などを経て、2010年から弁護士となった異色の経歴の持ち主。経営戦略を講義する大学教授でもある。税務や金融ビジネスの知識と実務経験が豊富な上、個人クライアントの相談の大半は相続問題だというから心強い。

“法定相続”こそが
トラブルの原因

 昨年1月から相続の税制が変更され、基礎控除が40%も圧縮された結果、大幅な増税となった。相続人が2人の場合、以前は、基礎控除(遺産のうちその金額までは相続税がかからない額)が7000万円だった。これが改正後は4200万円にまで減った。相続人が3人なら、かつて8000万円あった基礎控除が今や4800万円。この大きな差が、相続税の額にストレートに響いてくる。これほど大きな増税があったのに、ほとんどの人は何の準備もせず、遺言書も残していない。植田弁護士の家もそうだった。

「私は母を5年前に、父を昨年亡くしました。姉と私の2人が相続したのですが、問題は資産のほとんどが父の名義だったこと。相続には、1億6000万円を上限とする配偶者控除があります。しかし夫が資産の大半を持っている夫婦で妻が先立った場合、これは適用されません。我が家の場合も、あらかじめ財産を父と母で均等に分けておいてくれれば、母が亡くなったときに半分引き継ぎ、父が亡くなったとき残り半分を引き継ぐ形になるので、相続税は楽になったはず。同じように多くのご家庭が、資産の大半を夫名義にしています。これを生前に妻と均等に分けておくだけで、相続税の負担が軽くなり、遺産総額が基礎控除の枠内に収まる場合もあります」

 日本では、亡くなる人の90%以上が遺言書を残さないため、多くが法定相続になる。ところが植田弁護士は、「『法定相続は公平』という固定観念がいけません。二分の一とか四分の一に均等に分けるのが難しいことから、トラブルになるのです」と指摘する。

 なぜなら、遺産の大部分は不動産という場合が多い。不動産は税法上、土地なら路線価、建物は固定資産税で評価すると決められている。しかし時価と路線価では、3割から4割も違う場合があり、不公平感を生む。また、亡くなった親の介護がかかわるケースでは、一方が「最後まで面倒をみた分、遺産を多めにもらう権利がある」と主張すれば、他方は「親の預金を勝手に下ろして使っていたじゃないか」と反論する。遺族の言い分は、ことごとく食い違う。植田弁護士は、効率的な節税と資産運用の面から問題を整理し、解決策を導いていく。

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