親族に譲るだけが
事業承継ではない
「仕事術」や「企業再生」などに関する著書も多数ある
また、同事務所には、個人事業者や中小企業のオーナー経営者からの相談も多い。その多くが事業承継の問題だ。
金属部品を扱っていた町工場を大きく成長させた二代目社長は、70代になって、経理部長に就けている30代の息子へのバトンタッチを考えた。しかし、植田弁護士は反対した。
「中小企業は経営者次第です。順調にいっているのなら、『事業承継を急ぐより、できるところまで社長が続けたほうがいい』と申し上げました。特に今の時代、業務を拡大して利益を上げられる後継者など、なかなか出てきません。息子さんに無理に継がせる代わりに提案したのは、優秀で信頼できる社員を後継社長に選ぶこと。うまくいかなければ交代させればいいのです」
事業承継では、M&Aという選択肢も積極的に捉えている。
「事業を売ることを、恥と考える必要はありません。無理して家族に継がせて行き詰まるより、うまくいっているうちに売却して現金を得たほうが、みんなの幸せになる場合もあります」
植田弁護士の問題解決へのアプローチは、ほかの弁護士と大きく異なる。法律の解釈優先ではない、依頼者の意向と利益に適ったコンサルタント的なスタンスは、銀行やコンサル会社での30年に及ぶ人生経験からくる特色だ。
「税務や経営の全体像をまず考え、それを法律に従って実現する方法を考えていきます。相続は問題がこじれてから相談に来る方が多いのですが、遺言書さえ作っておけば、遺族が揉める余地は生じません。節税についても、適切な対策を一緒に考えることができます」
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