物流業態の拠点を活用、
ROAの改善を図る

 全国に拠点を持つ大手物流業者A社のケースは以下の通りだ。

 近年、物流業界は競争激化による送料単価の下落やサービスの多様化が進んでおり、A社も変化の激しいマーケット環境に置かれていた。現状では、拡大戦略のために維持してきた拠点設備の老朽化や、周辺環境の宅地化や商業地化といった変化への対応という課題も抱えていた。そこで、保有する不動産を可能な限り維持したうえで、ROA(総資産利益率)の改善を図るため、CRE戦略を通して収益の増加を目指した組織的な取り組みを行うことになった。

 まず不動産情報を詳細に把握するため、「CRE@M」を導入して保有資産を可視化した。その結果、全保有資産の約2割が築35年以上の老朽物件であり、今後、膨大な修繕コストが発生することが判明した。さらに容積率を消化できていないなど、非効率な物件が多数あることも浮かび上がった。その一方、立地特性の面で高い収益性を見込める資産も少なからずあることがわかった。

情報開発グループ 役員補佐
情報開発一部・二部・三部担当
浅野栄一

 こうした実態を踏まえてCRE戦略を策定した。その具体的な施策について、浅野栄一・情報開発グループ役員補佐は次のように説明する。

「まずはA社の運送ネットワークの機能を維持するため、一時移転先の物件情報を紹介しました。そして、老朽化していた従来の運送拠点を整理・統合することにより運送効率・収益性をアップさせました。また、移転により遊休地となった一部の土地には新築マンションを建設しました。このような多岐にわたる包括的なCRE戦略を推し進めた結果、総資産に対する利益率が改善し、ROAが向上したのです」

グループの総合力を活かして
解決策を提案する

 三菱地所リアルエステートサービスの強みは、単なるCRE戦略の立案だけでなく、三菱地所グループのさまざまなノウハウやリソースを活用できることにある。不動産鑑定評価から、不動産の売却・購入・賃貸借サポート、ターンアラウンド(企業再生)に至るまで、広域な総合力を活かしたさまざまな角度からの提案やソリューションを、ワンストップで提供できるのだ。

 同社がサービスを提供するのは資産規模の大きい企業から、多数の不動産を抱える個人富裕層までと幅広い。「『CRE@M』を活用し、不動産の資産価値や実態を可視化することで、企業独自のCRE戦略が生まれてきます。CRE戦略の目的は企業ごとに違うので、ていねいなヒアリングを通して、その企業にとっての最適な解決策を提案していきたいと考えています」(前田部長)と、CRE戦略を通じて企業価値と資産効率の向上をサポートする考えだ。