任せる業務・役職を明確に
採用目的の共有も大事

 ここで、レックスアドバイザーズが公認会計士の採用に関わった企業の事例を簡単に紹介しておこう。

 グローバル展開を進めるある東証1部上場のメーカーは、連結決算や予算立案、統制業務などのグループを統括する部門で公認会計士を戦略的に採用、その数は約20人にも上る。

 M&Aを検討するある上場企業は、経営企画部長候補としてデュー・ディリジェンスに長けた30代前半の公認会計士を採用した。

 また、IPOの準備に入ったある新興企業では、監査法人のIPO部門で経験を積んだ会計士を採用、上場に向けた体制づくりや主幹事証券会社、監査法人への対応などを一元化させ、少数精鋭で計画的にIPOを目指す環境を整えた。

 このほかにもCFO候補としての採用やベンチャー企業の経理部長への抜擢などさまざまな事例があるが、実際に会計士を採用するうえで、留意すべき点はあるのだろうか。

「公認会計士は何でもしてくれると思ったらそれは間違いです。人間ですから限界はありますし、同じ会計士でも若手とベテランでは当然ながら経験と実務能力に差があります。経験豊富な会計士なら即戦力として期待できますが、若手ならば育てる気持ちがあってしかるべき。大切なのは企業が社内のどこを強化するかをよく考えて、適切なポジションに組織内会計士をアサインすることです」と岡村氏はアドバイスする。

 また、どんな組織でも大事なのは人間関係、とりわけ上司との関係だ。岡村氏が過去に聞き及んだ例では、50代の生え抜きの経理部長が経験則で上から物を言い、30代の公認会計士と意見が合わないといったケースがあったという。企業側が組織内会計士を雇用する目的について事前に社内で認識を共有し、そのスキルを最大に活かせる準備を整えておくことも大事だろう。

「初めて公認会計士を採用する場合などは特に、任せる業務範囲やポジションに悩んだり、自社の風土に合う人材を見極めることが困難だったりすることも少なくありません。そうしたケースで、当社がアドバイスできることも多いですし、常にミスマッチのない人材紹介を行うため時には採用を検討する企業側に意見を申し上げることもあります」

 一方、同社を通じて転職先を探す人材に対しては、「人生の一時期を預かるのと同じことですから、キャリアの支援者として責任を強く感じながら業務に当たっています。仮に紹介した先でうまくいかないことがあれば、当社の信用問題にもつながりますから、常に真剣勝負です」と岡村氏。公認会計士の採用については、実績豊富な人材紹介会社を通じて行うことが、ミスマッチのリスクを減らすことにつながりそうだ。