トラックドライバー不足をはじめ日本の物流は大きな課題を抱えており、将来に向けての危機感も高まっている。課題解決のためには、物流の効率を高めるしかない。標準パレットの活用は、その切り札として期待されている。

加納尚美
日本パレットレンタル
代表取締役社長

 いま、日本の物流は大きな課題に直面している。ドライバーの高齢化が進んでおり、若手の採用がままならない。一方で、少品種大ロットでの輸送から、多品種小ロットへのシフトという大きな動きも見逃せない。多品種小ロットになれば、物流の効率は低下せざるを得ない。

 こうした課題に正面から取り組んでいるのが、さまざまな企業に標準パレット※1を提供している日本パレットレンタル(以下JPR)である。同社の加納尚美社長は次のように語る。

 「ドライバー不足の原因の一つが、手荷役という重労働です。10トントラックの場合、加工食品などの積み込みや荷降ろしには、それぞれ約2時間かかります。しかも、付帯サービスとして行われているケースも多いのが現場の実態です」

パレット化に加えて
レンタルでさらに効率化

 例えば、A地点からB地点に2時間かけてモノを運ぶとしよう。パレットなしの場合、積み込みと輸送、荷降ろしに各2時間かかるので計6時間。パレットとフォークリフトなら積み降ろしを30分に短縮できるので、「30分+2時間+30分」の計3時間だ。「3時間なら、ドライバーは1日のうちにもう1往復することも可能。荷役作業が大幅に軽減されるとともに、ドライバーの収入増やドライバー不足への対策にもなります」と加納社長は説明する。

 現状では、手荷役が主体の分野は少なくない。パレット化がさらに進めば、日本の物流はもっと効率化できる。また、メーカーなどが自前のパレットを運用しているケースも多い。レンタルにすれば、さらなる効率化が可能と加納社長は話す。

レンタルパレットを活用すれば、パレット自体の総量が減るだけでなく、パレットを回収するために各社が走らせるトラック量も減るため、大きな環境負荷軽減につながる

 「輸送用途にパレットを使う場合、最も荷動きの多い時期に合わせてパレットを用意する必要があります。全てを自前で持つとオフピークにはパレット稼働率が低下し、保管コストも掛かります。レンタルならば、こうした非効率を解消できます」

 納品先で自社パレットを回収するのは意外に難しい。まだ商品が載っていたり、他社のパレットと混在したりと自社パレットだけをピックアップするのは容易ではない。年間数十%のパレットを紛失するケースも珍しくない。20年前、食品メーカーの多くも回収に関して同じ悩みを抱えていたが、解決のためJPRと共にレンタルパレットの共同利用と共同回収の仕組みを作り上げた。JPRによるパレットの回収率は現在99%。年間出荷枚数は約2660万枚と加工食品業界の物流を支えるインフラへと成長した。

 ※1 物流に用いる荷物を載せるための荷役台のこと