企業経営には「全体最適」への
意識改革が必要

 一方、荷主企業側にとっても、ロジスティクス改革は最重要課題の一つだ。

 もちろん、第3の利潤源ともいわれる物流コストの削減が、企業の利益に直接的に結び付くことを理解していない経営者はいないだろう。しかし、ロジスティクスのパフォーマンスを評価し、本当の意味でマネジメントができている企業は、まだ少ないのが現状だ。

 たとえば、支出物流コストといった限られた指標に基づいて管理を行っていたり、事業部門や物流拠点ごとの管理にとどまっている例もある。ロジスティクスは部門横断的な機能であるため、部門ごとの「部分最適」に陥ってしまうことが少なくないのだ。徳田氏は、「ロジスティクスのパフォーマンスと経営パフォーマンスには、相関関係があることをあらためて再認識すべき」と指摘する。

「われわれがロジスティクスの評価分析を研究する過程でまとめた『ロジスティクス総合指標』というものがあります。在庫や物流コストなどの多数の指標で評価したものですが、これが高いほど、一般的な経営指標も高くなる傾向が見られます」

 つまり、経営改善、企業価値の向上を図るうえでロジスティクス改革は避けて通れないというわけだ。それが、企業競争力に直結していることは言うまでもない。

「たとえば消費財でいえば、店頭で販売機会ロスが生じないシステムをいかに構築するかが重要ですが、経営トップがロジスティクスを熟知して、需要予測や生産・販売計画といった各機能をトータルで管理できる企業は、当然強い競争力を持っています」(徳田氏)

 コモディティ化により、他社製品との差別化が価格競争に陥りがちな今、製造・販売・物流の全体最適によるトータルなコスト削減、品質管理強化、リードタイム短縮などは製品競争力の大きなアドバンテージとなる。グローバルなロジスティクスソリューションを活用した「全体最適化」の視点は、経営戦略のなかで、今後ますます重要な意味を持ってくるに違いない。

アジア最大級の物流・ロジスティクス専門展示会「国際物流総合展2010」
会期:2010年9月14日(火)~17日(金) 4日間
会場:東京ビッグサイト(東京国際展示場)
物流・ロジスティクスの最新動向と先進情報に触れることができる「国際物流総合展」が、上記会期・会場で開催される(日本ロジスティクスシステム協会など関連7団体が主催)。「グローバル化」「環境」をテーマにした集中展示のほか、400社以上の出展企業が、物流面の経営課題を解決する最新機器・システム、先端サービスなどを紹介する。詳しくは、下記ホームページを参照。
http://www.logis-tech-tokyo.gr.jp/

※「週刊ダイヤモンド」9月11日号も併せてご参照ください。
※この特集の情報は2010年9月6日現在のものです。