東日本大震災から ほぼ5年後に発生した熊本地震を目の当たりにし、 防災に対する意識が改めて高まっている。 災害への備えと対策は、どのような視点から追求すべきなのか?

 「天災は忘れた頃に……」といわれるが、あらかじめ予測できないのは時期だけではない。どこで発生するのかについても、正確に予測するのは困難だ。そのことを念頭に置いた上で、まずは左の日本列島の地図に注目していただきたい。

 これは地震調査研究推進本部地震調査委員会が今年6月10日に公表した「全国地震動予測地図2016年版」で、今後30年間に震度6弱以上の地震に見舞われる確率を示したものだ。赤みが濃い地域ほど、その確率が非常に高いという判定になる。

厳重警戒の地域以外で
大地震の発生が相次ぐ

 文部科学大臣を本部長とする同委員会は、1995年1月の阪神・淡路大震災で戦後最大の被害(10万棟超の建物が全壊)を受けたことを教訓に設立された組織だ。しかしながら、明治大学危機管理研究センターの中林一樹特任教授は次のように指摘する。

 「阪神・淡路大震災以降も、鳥取県西部、十勝沖、新潟県中越、福岡県西方沖、能登半島沖、新潟県中越沖、岩手・宮城内陸、東日本大震災、さらに今回の熊本といった大地震に見舞われていますが、そのほとんどが予測地図において真っ赤に塗られた地域以外で発生しています。結局、いつどこで発生しても不思議はないのです。しかも、それは30年後かもしれないし、明日かもしれません」

 予測地図では発生確率がさほど高くないと判定されている地域であっても、油断は禁物だということだ。真っ赤に塗られたゾーンはなおさらであろう。具体的には、南海トラフ、東海・東南海・南海連動型、首都直下型などといった大地震が想定されている地域が該当している。

 「内閣府の首都直下地震対策検討ワーキンググループは、今後30年以内に70%以上の確率で発生し、首都圏の広範において震度6強の揺れになると予測しています。被害についても、都心南部で冬季の夕方に発生という最悪の想定で阪神・淡路大震災の5倍強に及ぶ約61万戸の家が倒壊・焼失するとみられています。

 首都直下型であれば行政や金融機能への、南海トラフや東海・東南海・南海連動型であれば、名古屋や大阪などのモノづくりの現場への打撃が大きいでしょう」(中林特任教授)