優れた人材をいかに活用するかは企業にとって永遠のテーマ。全国に洗練された高級温泉旅館やリゾート施設を運営する星野リゾートでは、出産・育児や配偶者の転勤などで従来の働き方ができなくなった従業員に対する在宅勤務制度を推進している。特に今回は同社のコンタクトセンターでの取り組みについて紹介する。
業務の幅を広げることは
本人のやりがいにも通じる
少子高齢化が一層進展する中、企業にとっては、マンパワーを最大限に生かすために従業員の多様な働き方をいかに実現するかが重要になっている。出産・育児や老親の介護などで従来の働き方が難しくなる社員も増えている。せっかく積み重ねた経験を「個人の事情」で諦めざるを得ないのは、企業にとって大きな損失だ。そういった社員に対して有効な対策となるのが、在宅勤務制度である。
人材活用の先進企業として知られる星野リゾートも、在宅勤務制度を積極的に取り入れている。その一つが沖縄にあるコンタクトセンター「星野リゾート統合予約センター」だ。30人のオフィス勤務に対し、在宅勤務は13人に上る(2016年7月現在)。
電話オペレーターは全施設に精通し、顧客が知りたいことに答え、的確なアドバイスを提供しなくてはいけない。いわば「顔の見えない接客業」として高度なスキルが求められる。しかし、通信環境の問題などから、在宅勤務社員の業務は従来、メール対応や事務処理に限られていた。
統合予約センター
ユニットディレクター
安田隆明氏
「電話オペレーターとしても高いスキルを持っている人が多く、在宅勤務で電話応対の仕事ができないか検討していました」と星野リゾートの安田隆明氏は話す。それは、本人にとっても業務の幅を広がり、やりがいにつながるのではと考えたのだ。
そのため同社では、在宅での電話応対の仕組みを検討したが、既存のオンプレミス型電話設備の更改によってシステムの構築を行う場合、大規模な改修が必要となるため、数千万円の工事費、また検討や準備を含めて2年程度の期間が必要になると考えていたという。
しかし実際は、既存の設備はそのままで、数万円という驚くべき低コストで、スピーディに在宅勤務用の電話環境を整備。オフィスにいるのと同様の環境で在宅勤務できる仕組みを構築することに成功したのだ。
社員の居場所に関係なく、どこにいてもオフィスにいるのと同じように電話の受け答えができる――。星野リゾートの事例は、電話オペレーターという職種に限定されることなく、テレワークでの営業活動などさまざまな範囲に応用可能だ。
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