水分補給が引き起こす
「低ナトリウム血症」の恐怖

 熱中症対策の大切さは言うまでもない。だが、水分補給としてやみくもに「水だけを飲む」のは望ましくないと、伊藤氏は指摘する。水分の取り方を一歩間違えると「低ナトリウム血症」という、まったく別の疾患を発症してしまうリスクがあるのだ。

「低ナトリウム血症とは、水を大量に摂取することで、血液中のナトリウム濃度(塩分の濃度)が低下して発症する疾患です。汗などで失われる水分には、ナトリウムを含む電解質が含まれています。そのため、水だけを飲み続けて汗を大量にかいていると、血液中のナトリウム量が極端に少なくなってしまうのです」

 近年では、熱中症予防として子どもの運動時や屋外作業員に「水」を飲むことが徹底されるようになったが、それと同時に塩分不足による「低ナトリウム血症」のリスクが高まっているという。

「低ナトリウム血症の症状は、軽症の場合はめまいや脱力感、疲労感のみですが、症状が進行すると頭痛や悪心、嘔吐、ボーッとして意識がはっきりしないような傾眠傾向が出現します。重症例では、重い意識障害、性格変化、けいれんや昏睡を引き起こし、最悪の場合、命の危険もある病です」

 低ナトリウム血症は、熱中症だけでなく下痢や心不全、腎疾患などさまざまな要因で発症する。特に、体温調節がしにくい高齢者や幼い子どもは発症リスクが高いという。

「意識障害がある場合は、かなりの量のナトリウムの補給が必要になるので、すぐに医療機関を受診してください。病院では、点滴とともに経口でもナトリウム補給をします」

 病院に行くほどではなくても、めまいや頭痛などの初期症状があるときは、水分とともにナトリウムを含むミネラル補給が必要だ。