今夏の暑さは“異常”といえるほどであり、マスメディアや行政でも盛んに熱中症対策が叫ばれている。ところで、熱中症によく似た症状を示す「怖い病気」があることをご存じだろうか。この暑さの中、医師も先入観から“熱中症”と誤診しやすいので、注意が必要だ。(医療ジャーナリスト 木原洋美)
猛暑の中で倒れ
熱中症と診断されたが…
(あれ、また空振り。へんだな、どうして当たらないんだろう)
高校1年の夏休み。35度を超える猛暑の中、A君はテニスの部活で練習に励んでいたが、普段はしない空振りを連発し、戸惑った。中学3年の県大会ではダブルスでベスト8まで進んだ実績を持つ。初心者みたいなミスを繰り返すはずがない。
「あいつ、おかしいぞ」
他の部員が異変に気付いた頃にはもう立っていられなくなり、気を失ったA君は、病院に救急搬送された。
「熱中症ですね」
血液検査とCT検査を行った後、医師はそう診断した。2~3時間の点滴治療の後、「もう帰ってもいいですよ」と促されたが、どうも様子がおかしい。ろれつが回らないし、何を話しかけても「うん、うん」としか答えない。
「入院させなくても、大丈夫なんですかね」
父親が問うと、医師も看護師も、「重症の熱中症で倒れた後は、みんなこんな感じです」「家に戻って安静にしていれば、じきに回復しますから」と取り合わない。
だが、そうではなかった。