日銀7月会合はトランプ25%関税で「利上げなし」でも、「10月利上げ」可能性が消えない理由Photo:Bloomberg/gettyimages

日米関税見直し交渉、“出直し”
日銀、7月利上げ可能性はゼロ

 日米間の関税見直し交渉は、トランプ米大統領が、すでに発動した一律10%課税を含めた新たな相互関税率「25%」を8月1日から実施することを日本側に一方的に通告し、“出直し”の状況になった。

 新たな相互関税率は従来、米国が示してきた24%から25%にわずかながら引き上げられたが、交渉期限を20日間ほど延長してきたとも解釈でき、これで、日本銀行が7月30~31日に予定する金融政策決定会合での利上げの可能性はゼロになった。

 もともと今月の金融政策決定会合で利上げが決まる可能性は、ほとんどなかった。米国が対日関税を思いのほか引き下げてくれば話は別だったが、日銀もそうした想定は現実的でないと十分認識していたはずだ。

 そもそも日銀は、トランプ関税とその影響も含めた物価・経済の不確実性が続く中、7月の利上げにはこだわっていなかった。むしろ日銀が恐れていたのは、想定以上の物価上昇によって、ビハインドザカーブとの見方が強まり、早期の利上げを余儀なくされることだ。

 5月の全国の消費者物価(除く生鮮食品)は、コメ価格が前年の2倍に高騰していることも影響して、前年同月比+3.7%とかなり高い上昇で、こうした状況が続けば、日銀に早期の利上げを迫る圧力になったかもしれない。

 しかし、物価上昇圧力は徐々に落ち着いてくるだろう。原油など資源価格は中東情勢の不安もあり上昇することもあるが、国内のガソリン価格などは、急激な円安の一服もあって高水準ながら落ち着いてきている。

 また、安価な備蓄米も店頭に並ぶようになってきた。さらに、7月以降は夏場の電気料金・ガス料金の値引きも始まる。

 日銀にとっては、米国からの新たな通告でトランプ関税の動向や日本経済への影響が一段と読みにくくなるなかで、物価の面からも状況を判断できる“ゆとり”が出てくる状況だ。

 だが、筆者は10月30~31日に予定される金融政策決定会合で日銀が「利上げ再開」を決める可能性は十分にあると考えている。