もしトランプ大統領が米国内の経済格差が問題というのなら、富裕層から貧困層への富の分配をすればよい。この図からもわかるように、米国もドイツのように強力な所得再分配策を実施すれば、国内の経済格差はかなりの程度、緩和される。

 それをしないで、移民や対米貿易黒字国の中国や日本などを非難するという、外に「敵」を作って攻撃しているところに、トランプ大統領の政治的意図を見ることができる。

格差の原因は情報化投資
雇用・所得の二極化を生み出す

 では、経済格差が拡大してきた「ホント」の原因は何なのか。それは国内の活発な情報化投資だ。

 以下に紹介するのは、デイビッド・オーター(David H. Autor、1967年生まれ)がJournal of Economic Perspectives, Volume 29, Number 3, Summer 2015 に投稿した論文“Why Are There Still So Many Jobs? The History and Future of Workplace Automation”である。

 同氏は、ハーバード大で修士号・博士号を得て、現在、MITで教授をしている。労働経済学が専門で、これまで、Econometric Society (2014)、American Academy of Arts and Sciences (2012)、Society of Labor Economists (2009)などで賞を得ている著名な研究者だ。

 将来、ノーベル賞を受賞してもおかしくないくらい経済学会での存在感は大きい。

 オーターが本論文で解明しようとした課題は、古くは機械の導入やロボット、ITなどと雇用や格差の関係だ。

 すなわち、過去2世紀にわたって新しい技術の出現は多くの職業を奪ってしまうと警告され続けてきた。19世紀には、英国で、織機を打ち壊すラッダイト運動も起こった。雑誌TIMEは1961年2月24日号で「オートメーションが職を奪う」とのタイトルで特集記事を組んだ。

 だが現実にはそうはなっていない。2世紀経った今でも多くの職業が存在している。それは、「嘘」だったのか。いやそうでもない。

 彼は、独自の計算方法で、米国における1つひとつの職(ジョブ)に対して、「スキル度」(例えば、当該職業で働く大卒比率やその他要因などを加味して計算)を算出し、横軸にスキル度0%の職(ジョブ)から順に100%に向けて、左から右に向かって並べた。

 例えば、低スキルの職とはトイレの清掃員、中スキルの職とは企業の経理職員、高スキルの職とは企業コンサルタントやアナリストなどである。

 そしてそれぞれの職(ジョブ)ごとに、縦軸に雇用比率の変化をプロットした。それが次に示した図だ。