岩本晃一
AI、ビッグデータなどが産業やビジネスを根本的に変える「第4次産業革命」を生き残るには高度IT人材の養成が必須だが、日本は人材投資が大幅に遅れている。企業の賃金体系や大学の在り方も変える必要がある。

新型コロナウイルス問題でテレワークやオンライン授業の便利さが体験された結果、“コロナ後”にIT化はますます加速する。だが同時に、格差拡大を防ぐため所得再分配政策や働き手の技能再教育制度の拡充が必須だ。

賃金が上がらないのは、デジタル技術でお金を稼ぐ時代になったのに、経営者がデジタル分野での商品・サービス開発や人材投資よりも省力化投資に注力したからだ。生産性が上がらず賃金が増えない構造が出来上がった。

AI導入で女性の働き手が仕事を失う可能性は男性の5倍とか、30ヵ国で2600万人の女性が職を失う可能性が高い仕事に就いているといった試算がある。なかでも日本の女性は最もリスクが高いとされる。

プラットフォーマーは経済格差を生みだす一方で、世界中からマネーや情報を吸い上げている。日本からどれぐらいのマネーが流出しているのか、個人の通信費や企業の広告費などだけでも年間3兆円程度と考えられる。

デジタル技術が生み出した新しいネット型ビジネスモデルは、経済の生産性を高め、便利なサービスや「自由な働き方」を実現する一方で、新たな経済格差や“貧困層”を生み出す負の側面をあわせ持つ。

製造業の現場では新デジタル技術の導入で作業員の仕事の多くは人工知能に代替される一方で、データエンジニアなどの高スキルのエンジニアへの需要は増える二極化が進みそうだ。問題は現場の作業員が新たな職に就ける再教育・再訓練の場が少ないことだ。

IT投資の本格化で7年後、事務補助や単純作業に従事する人を中心に約140万人が職を失う。その半数の70万人は、低スキル低賃金の職を、受け入れが増えた外国人労働者と奪い合うことになる。

2回目
情報化投資が遅れていた日本でもAI導入で定型的な業務を自動化する動きが広がり、格差はこれから一気に大規模に拡大すると予想される。控えめに見ても7年後には140万人の非正規雇用が職を失う見通しだ。

経済社会を大きく変え始めたIoT、 AIなどデジタル化だが、社会科学の知見を持つ専門家が少ないこともあって、誤解や誤った情報がうのみにされることが多い。雇用への影響や経済格差をめぐる議論はその最たるものだ。
