AIに奪われる仕事労働集約的な仕事はAIに仕事を奪われます Photo:PIXTA

今ある仕事の大部分が、2030年にはAIに置き換わるといわれている。果たして、あと十数年後に私たちが直面する日本ではどのような世界が広がっているのか。『物語でわかる AI時代の仕事図鑑』の著者であり、経営コンサルタントの竹内一正氏が、AIによって加速する格差社会の現実と2030年のAI社会になっても生き残るための原則を語る。

「インターネットは貧乏人のツール。AIは金持ちだけのツール」

 ハーバード大学で金のない学生のザッカーバーグが立ち上げたフェイスブックが大成功したのは、タダ同然で使えるインターネットという“ふ化器”があったからだ。ツイッターにしても同様である。インターネットは貧乏人を成功に導くツールであり、今でもその神通力は健在だ。

 しかし、AIは違う。

 AIはタダでは使えない。AIに入力する膨大なデータを集めるにも金がかかる。その上、データ量が多ければ多いほどAIは力を発揮するが、より多くのデータを集めるにも、より多くの金がなくてはならない。しかも、AIが力を発揮するには高性能なコンピューティング能力が必要となり、それにも金がかかる。

 AIは金持ちをより金持ちにする性質を持っている。一方、AIの恩恵に浴せない中小零細企業や個人事業主、資金のない個人はAI格差の谷に落ち込んでいく。

「インターネットは貧乏人のツールだったが、AIは金持ちだけのツールだ」

 これはあるAI研究者の言葉だ。

 日本政府は「日本に格差はない」と大本営発表みたいなことを言うが、日本で格差は拡大していることは事実だ。そして2030年に向けてAIによって格差はさらに広がっていく。

AIは、常に正しい答えを出せるわけではない

 AIに関する本は既に多く出ているが、AIはそれだけが単独で私たちの前にポンと出現するわけではないことに注意が必要だ。企業の都合や、社会の受け入れる力と綱引きをしながら浸透していく。その時、仕事を奪われると考える人たちは抵抗するだろうし、全ての問題が解決できると過大評価してしまう社長は先走るに違いない。