2013年4月、黒田東彦・日銀総裁は総裁就任の記者会見で、デフレが長く続く中で、自殺者数が高止まりしていることと金融政策の責任を問われたが、その発言がそのことを示している。

「自殺云々の話は、昔から有名な──確か大学の時に習いましたが──、デュルケムという有名な社会学者の研究など色々ありますが、私が日本銀行総裁として、わが国における自殺の原因について特別の知見があるわけでもありません」と、答えただけだった。

 筆者は、米国プリンストン大に留学した時に、後にFRB議長になったバーナンキ教授やノーベル経済学賞受賞のクルーグマン教授、FRB元副議長ブラインダー教授、スウェーデン中央銀行副総裁になったスベンソン教授らの講義を聴いたり話をしたりする機会があった。

 彼らの間では、中央銀行が雇用に責任を持つことは、常識中の常識だった。

 また雇用(失業率)と自殺率の間に相関があるのは、上記の図や社会学的にみても明らかだ。

 したがって、金融政策が自殺の多寡に大きく関係するのは当然だろう。

 金融政策と雇用でいえば、日本の経済学者で、上記のマクロ経済の関係を数量的に理解している学者は一流でも少ないように思われる。数学や統計の基礎訓練が海外と比較してできていないからだろう。

 インフレ目標と雇用の関係についても、やや誤解がある。

 インフレ目標は、雇用の増加に伴い一般的にはインフレ率が上がる傾向があるために、過度な雇用を作ろうとしてインフレ率が上がりすぎるのを防ぐ役割がある。

 金融緩和によって失業率が低下する中、インフレ率が上がらないのは、デフレでない限り金融政策としてはそれほど失敗ということではない。

 ただいずれにしても、アベノミクスの金融緩和によって雇用が創出され失業率が低下した。その結果、自殺率が下がるのは予想通りだ。

 それが、冒頭の警察庁データでも確認できたわけだ。

地方での自殺率低下は
自治体の取り組み次第

 金融政策と雇用、失業率と自殺率の相関について、ここまでは全国レベルのマクロの話を書いたが、地方レベルでも同様の傾向になることが多い。