今でこそ世界の歌劇場で歌って演じる日本人オペラ歌手は増えているが、100年以上前に英ロンドンでデビューし、欧米各国で活躍した女性がいた。三浦環(1884~1946)である。詳細を記録されてしかるべき伝説的な歌手だが、なかなか本格的な評伝には恵まれなかった。そこに2022年10月、最新の評伝が登場した。著者は脚本家の大石みちこ(東京芸術大学大学院客員教授)で、全て読み終えた後の充足感は深い。近年では傑出した評伝だ。

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