
「ウェルビーイング」は、1948年の世界保険機関(WHO)設立の際に考案された憲章で、初めて使われた言葉だ。「幸福で肉体的、精神的、社会的全てにおいて満たされた状態」をいう。新しい幸せの形として用いられ、最近さまざまな場面で耳にすることが多くなった。『ウェルビーイングの新潮流』第20回では、重要な栄養素として見直されつつある「食物繊維」について、その種類や働きなどを詳しく解説する。
食物繊維は「水溶性」と「不溶性」に分類
それぞれどんな作用がある?
昨今の腸活ブームもあり、「食物繊維」という言葉は一般の生活者にも、すでに馴染みのある言葉になっています。食物繊維は、糖質と同じ炭水化物の一種ですが、ヒトの消化酵素で消化されずに大腸まで到達する成分です。有効なエネルギーが少ないため、かつては食べもののカス・不要なものと思われていました。
しかし、お腹の調子を整えるなど、体に有用な働きをすることが明らかになり、今では“第6の栄養素”とも呼ばれています。食物繊維という名前から、糸やスジのような形状を想像しがちですが、水に溶けてサラサラしているものや、ゲル状のもの、蜂の巣のような形でボソボソした食感のものまで、いろいろあります。
近年の研究では、食物繊維の摂取量が多いほど、脳卒中や糖尿病、乳がんや胃がんなどの発症率や死亡率が下がる傾向があることが分かってきて、体重や血圧、総コレステロール値も低くなることが報告されています。
食物繊維は玄米やトウモロコシなどの穀類、ゴボウやキャベツなどの野菜、サツマイモなどの芋類、大豆や納豆などの豆類、ワカメや寒天などの海藻類など、さまざま食品に含まれています。
食物繊維は水に溶ける「水溶性食物繊維」と、水に溶けない「不溶性食物繊維」に分けられ、水溶性食物繊維は食後の急激な血糖値の上昇を抑えたり、血中コレステロール濃度を低下させたり、腸内細菌を改善したりといった作用が期待できます。
一方、不溶性食物繊維は便の量を増やしたり腸を刺激したりする便秘予防や、発がんリスクの軽減、水溶性と同じく腸内細菌を改善する作用も期待されます。