映画「ビー・ジーズ 栄光の軌跡」が2022年11月25日から公開されている。東京ではヒューマントラストシネマ渋谷と新宿武蔵野館、大阪ではシネ・リーブル梅田といった文芸作品を上映する小型の映画館でスタートし、順次全国主要都市で上映する予定だ。ビー・ジーズは1967年の「ビー・ジーズ・ファースト」から2001年の「ディス・イズ・ホエア・アイ・ケイム・イン」まで、34年間に20枚のアルバムを発表し、全世界の売上枚数(レコード、CDなど)は、2億2000万枚を超える(タワーレコードの解説)。「ビー・ジーズ 栄光への軌跡」は、そんな世界的グループの幼少期から現在までを記録映像で編んだ秀逸なドキュメント映画だ。(コラムニスト 坪井賢一)
映画公開と同時に全20アルバムも再発売
映画「ビー・ジーズ 栄光の軌跡」公開と同時に、ユニバーサル・ミュージックから同バンド全20枚のアルバムが「SHM-CD仕様」でまとめて再発売された。SHMとはスーパー・ハイ・マテリアルという意味で、CDの素材を改善したものだ。サンプリング周波数44.1キロヘルツはCDと同じで、音質に変化はなくても耐久性は増したはずだ。
上映館にもレコード・ジャケット20枚のパネルが展示され、その前で記念撮影する観客も見受けられた。ポップスの歴史的記念品として全部そろえるファンは多いことだろう。
邦題は「ビー・ジーズ 栄光の軌跡」だが、原題は違う。原題は「The Bee Gees : How Can You Mend a Broken Heart」で、これは1971年のヒット曲のタイトルから転用したものだ。「傷ついた心を君はどうやって癒やしてくれる?」といった意味で、発売当時の曲の邦題は、「傷心の日々」と付けられていた。ビー・ジーズはイギリス出身の3兄弟のバンド。哀切な旋律を長男バリー・ギブが歌い、サビに入ると双子の弟ロビン・ギブとモーリス・ギブのコーラスが加わる。この曲で初めて全米ヒットチャートの1位に上り詰めた。
このタイトルを映画に付けた監督は、映画の終楽章で、長兄バリーの「傷心」を描いている。監督はフランク・マーシャル。スティーブン・スピルバーグ監督の「インディ・ジョーンズ」シリーズ、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズ、「ジュラシック・ワールド」などのプロデューサーとして名高い。監督作品も多数ある。マーシャルはビー・ジーズの栄光の陰にある「中傷や悲劇」にも目を向けている。