一般的に、中堅・中小企業では、経理や会計事務に精通した人材は限られている。かといって、高いリテラシーを持った人材を新たに雇用する費用対効果にも疑問が残る。そんなジレンマを抱えている企業にとって力になるのはアウトソーシングサービスの導入だ。

 

 調査会社IDC Japanが最近公表したBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)市場の調査によれば、日本のアウトソーシング市場は2011年以降、着実に規模拡大を続けている。「財務/経理」分野も堅調に伸び続け、16年には1400億円超の規模になると予想されている(下のグラフ参照)。

 財務・経理のアウトソーシングというと、従来「記帳代行」という言葉に象徴されるように、事務的なノンコア(非中核)業務の外部委託というイメージを持たれていたが、最近は、委託企業にとっては、より戦略的な重要性を持つようになってきた。

 上場企業グループは、00年初頭からの会計ビッグバンで、複雑化した会計基準に合わせ、かつ「45日ルール」など決算の早期開示に対応しなければならなくなった。問題は、上場企業本体より、むしろその関連会社。財務・経理部門のスタッフが本社ほど充実していない子会社では、四半期決算一つ取っても特定の社員に業務が集中する。加えて、企業買収などで傘下子会社の会計ルールが違っていたりすると、連結決算作業のボトルネックになりかねない。

 ことに積極的な事業展開を図ろうとする新興企業にとっては、グループ企業内での会計基準の平準化、決算作業の早期化は、戦略的な意思決定に欠かせない重要ファクターである。

 上場企業グループだけではない。非上場の中堅企業でも、早期かつ精度の高い会計情報の把握は、いわゆる管理会計による財務体質改善、戦略的な経営計画には欠かせない要素だ。しかし、経理・会計の業務が一部の古参社員の元でブラックボックス化していたり、過去に導入した経理システムが老朽化するなどして、作業スピードや精度の改善が思うように進まないケースがよくある。

 そんな状況下に置かれた経営者や財務・経理責任者にとっては、経理・会計や税務のアウトソーシングは重要な検討課題。単にコスト削減や人材の適材配置といった「守りの経営改革」というより、「攻めの経営戦略」を考える上で喫緊の重要課題といっていいだろう。

 アウトソーシングサービス事業者(アウトソーサー)を選ぶ際には、専門性の高さや情報セキュリティだけでなく、スピードやきめ細かい顧客対応など「業務品質」の高さが大切であることを忘れてはならない。