人生100年時代の「新」大人の学び方
“ブレンディッドラーニング”のすすめ

株式会社ベネッセコーポレーション

あらゆることが目まぐるしく変化する現代、ビジネスパーソンが仕事で成果を出すためには、学び続けることが不可欠だ。しかし多忙な日々の中で、セミナーや講義に通うことは難しく、学び続けられないことに忸怩たる思いを抱えている人も多いだろう。そこで今回は、ダイヤモンド社から書籍も出版している、前田鎌利氏と熊野整氏に、「人生100年時代」の大人の学びについて語り合ってもらった。2人は、オンライン動画学習プラットフォーム「Udemy(ユーデミー)」にて動画講座を公開しており、セミナーや書籍だけでなく、いろいろな媒体を通して大人の学びを総合的に支援している。教育界ではさまざまな学習手法を組み合わせて学習効果を高める手法を「ブレンディッドラーニング」というが、2人はまさにその手法の提供者なのである。

 

個人のブランド力を高めるためにも
学び続けることが必要

前田鎌利氏
株式会社固 代表取締役
一般社団法人プレゼンテーション協会 代表理事

ソフトバンク時代に孫正義社長に直接プレゼンして多くの事業提案を承認させた他、孫社長のプレゼン資料作りも多数担当。独立後は、多くの企業でプレゼンテーション講師を歴任する他、全国でプレゼンテーション・スクールを展開。

――「人生100年時代」といわれていますが、社会人として働きだしても、あるいは会社をリタイアした後も、学び続ける必要があるのでしょうか。

前田 社会人になってからの方が、学ぶことが大切になっています。何かを学んでインプットすることをやめてしまうと、それまでの経験とか、知識の範囲内でしかアウトプットができなくなるからです。だから、絶えずインプットを続ける努力が必要です。

 人生100年時代を迎えて、定年後の人生が長くなっている今、リタイアしてから起業する人や、起業を目指す人も多くいるでしょう。精神科医の和田秀樹さんの著書によると、早ければ40歳を過ぎた頃から前頭葉が衰え、意欲や創造性が著しく落ちてしまうそうです。つまり40代までに学んできたこと、考えてきたことが重要になります。ここ数十年を見ても、社会やライフスタイルは著しく変化しています。何もしないまま60歳になって起業しようとしても、過去の成功経験や知識だけで対応できるものではありません。60代、70代になってもクリエーティブなことを続けられる元気な老年期を迎えられるようになるためにも、「学び」を継続する必要があります。

熊野 整氏
IT企業経営・財務企画勤務 兼 副業家

外資系投資銀行で、大型M&Aや資金調達プロジェクトを主導。現在は、IT企業で経営戦略、財務企画を担いながら、「グローバル投資銀行のエクセルスキルを分かりやすく伝える」をモットーに、個人向けセミナーや企業研修を多数開催。

熊野 私はファイナンスという会社の価値を計算したり、将来の事業の予測をしたりというお金に関する仕事をしています。つくづく感じるのは、知識というものは、時間がたつごとにどんどん役に立たなくなっていくことです。例えば、ファイナンス理論の教科書には会社の価値を評価する方法が載っていますが、最近のシリコンバレーの投資家の企業分析の手法や重視する指標は、すでに新しいものに変わってきています。少し前まで当たり前だった手法や指標、経験則は、もう通用しない。新しい知識を常にインプットし続けないと、途端に付いていけなくなります。

前田 終身雇用制度がなくなり、働き方改革によって、働き方は多様化しています。仕事は会社対会社ではなく、誰と仕事をするか、ということが問われるようになってきています。だから、個人のブランド力を高め、セルフプロモーション力を得るために、学ぶこと、インプットを増やすことが重要になってきているのです。

書籍、セミナー、オンライン動画学習、
それぞれの学び方の特性とは?

――社会人が何かを学び続ける方法として、セミナーや講演の受講、オンライン動画の視聴、書籍を読むといった方法があります。それぞれの学び方についてどのように捉えていらっしゃいますか。

前田 書籍は、好きなスピードで学べて、必要なところだけというショートカットも可能です。装丁を楽しんで、書棚を埋めることで何かを学んだことを示せるというニーズも満たせます。セミナーは、講師と参加者同士の一体感が味わえる。そして、限られた時間の中での集中力と、ある意味での瞬発力が必要です。

 オンライン動画での学習は、世界のどこからでもアクセスできますし、家だろうとカフェだろうと場所も選ばない、資料を置く本棚も要りません。そして、受講者が何か疑問を持ってメールなり掲示板に書き込もうとした際には、自分が理解できないこと、何を知りたいのかを熟考します。疑問に答える講師も熟考して回答できる。実は、オンライン学習の魅力は、やりたいときにすぐできることと、双方で発生するタイムラグで熟考できるというのが大きな特徴かもしれません。

熊野 セミナーと書籍に共通していることは、いろいろなスキルや興味を持った人に集まってもらう、書店で手に取ってもらうために、提供するコンテンツは、なるべく多くの人が「いいな」と思うものにしなければなりません。つまり、広く一般受けするものになりがちです。一方、オンライン動画は、多くの人が求めるマスなものと、ごく少数の人が求めるニッチなもの、両方を提供できるという大きな利点があります。

 私はスタートアップを目指したり、起業したばかりの経営者に向けた動画も提供しています。しかし、ベンチャーキャピタルからお金を集める方法などのテーマは、1億3000万人の国民のほとんどが必要としていません。ただ、ごく一部に熱烈に必要としている人は確実にいる。ECサイトの収益アップに効果的であった「ロングテール(ニッチな商品でも数多くそろえることで総体としての売り上げを大きくする)」手法が、オンライン動画によって教育の世界にも生まれていることに大きな可能性を感じています。

学習方法 メリット 課題 お勧めの活用法
書籍 検索性・一覧性の高さ
保管性(収集欲の満足)
特に手順を追った技術の学びにくさ 概論の理解
逆引きで調べるときや振り返り学習
教養的な学習
オンライン動画 特に技術の習得においての分かりやすさ
即時性(学びたいときにすぐ始められる)
自己ペースでの学習(倍速・巻き戻し)
学習の継続性 セミナーの事前事後学習
地方などセミナー機会が少ない学習者の利用
技術的な学習
セミナー 学習モチベーションのアップ
コミュニティーづくり
時間的、場所的制約
受講者のニーズ・レベルのばらつき
コミュニティーづくり
学習意欲の醸成
事前学習を前提とした発展的な学習

 

オンライン動画は、
セミナー複数回分の集大成(熊野)

熊野 私の場合、セミナーで話した内容を中心に、質問を受けては次のセミナーで改善して、を繰り返し、ほぼ質問が出なくなった、内容が伝え切れたと判断したら、オンライン動画を作成します。書籍もそうですが、オンライン動画は集大成なんです。また、私は地方でセミナーを開催することはほとんどないのですが、オンライン動画を通して地方在住や海外赴任中のビジネスパーソンにも学んでいただけるようになりました。

前田 知識を得ることはあくまできっかけであって、それを基に行動を起こして経験を積み重ねることが大切です。せっかく学んでも行動に移すのは、わずか10%にすぎないという統計があります。僕は、受講者が行動に移せるような伝え方を常に考えています。

 プレゼン手法についても、社内プレゼンはA3用紙1枚と決めている企業もあるし、ワードで20枚書いてじっくり読ませるところもあります。しかし、それは自社内やグループ会社でしか通用しない。顧客の前でプレゼンするときには別のやり方が求められます。つまり、複数のプレゼン手法を知っておかなければならない。人生100年時代、これから何が起こるか分からない中で、動画を提供する側としては、目先のことだけでなく、いずれ必要になるかもしれないという動機付けができる内容を提供する必要があると思います。

熊野 私は、講座の最初に「こういう課題を解決するテクニックを学びましょう」と、結論を明確にします。私自身、何々というテクニックがあるから教える、のではなく、自分で使うシチュエーションを考えて内容を構成しています。自分の中でケースイメージができないと、受講者にも伝わりにくいですね。

前田 「自分事」として捉えられないと、なんとなく学んで終わりになってしまいますからね。僕は、受講者が「今の業務にマッチしそう」と思える内容とシチュエーションを提示すること、あるいは「いつか使えるかも」と自分の“引き出しに入れる”気にさせる、この2点を意識しています。

 ただ、引き出しに入れてもこぼれ落ちてしまうことは多い。なので、忘れない仕組みを作ってほしい。例えば、1カ月後のスケジュール帳に「オンライン動画を見直す」と書いて実践するような復習の仕掛けをしておくと、知識が引き出しの中にたまっていくと思います。

 

ビジネスパーソンに求められるスキルセットとは

――お2人が考える、今、ビジネスパーソンに求められているスキルセットは、どのようなものでしょうか。

熊野 私の講座では、就職や異動でエクセルを使う必要が出たからと、3~4月に急に受講者が増えます。ただ、現在では扱えるデータ量が格段に大きくなってきています。「エクセルが使える」ということには、「データを基にした意思決定のロジックが組める」ことが求められるようになっています。さらに、エクセルで扱える100万行を超えるデータ量、いわゆるビッグデータを扱える人材は貴重です。そこは、私も一人の生徒として学ばなければならないという危機感を抱いています。

前田 プレゼンテーションを学ぶことは、パワーポイント、キーノートなどのツールの使い方やスキルを覚えることだと、多くの人が思っているでしょう。しかし、いくらテクニックが優れていても、プレゼンテーションは成功しません。まずは、自分の中で伝えるべきことを明確にした上で、結果を出すために、自分としっかり向き合うことが必要です。自分はなぜこの仕事をしているのか、何のために仕事をしているのかを考える。そして、考えるために、面倒くさいことをやる時間を増やしていただきたい、と思うのです。オンライン動画を見るのは面倒くさい、本を読むのは億劫。でもそういう面倒だと思うことをやるからこそ、自分と向き合う時間が持てるのではないでしょうか。

 

学習を長く続けるために、
セミナーや講演にも出掛けよう(前田)

――学習を長く続けるためには、どのようなことを心掛ければいいのでしょうか。

熊野 心に火を付ける努力をすること。セミナーは「face-to-face」なので、伝えたいことを心に直接伝えて火を付けることができますが、書籍やオンライン学習はそこがまだ弱い。それは私の課題でもあるのですが、場所と時間を選ばず学べる良さを上手に生かして、心に火を付けてください。

前田 僕はセミナーや講演も大切な機会と捉えています。セミナーや講演では、講師と参加者の間で気持ちの良い状態が醸成されます。茶道でいう、招いた者(亭主)と招かれた客の心が通い合う「一座建立(いちざこんりゅう)」という状態です。それは、限られた時間の中で、講師は絶えず引き付けておこう、眠らせないようにしようとするし、参加者もそれに応えようとする相互関係が成り立つからです。しかし、オンライン学習では、同じ熱量で話をしても離脱し放題(笑)。オンライン学習を継続するためには、セミナーや講演に出掛けたり、コミュニティーに参加することも長続きする一つの方法だと思います。

――本日お話を伺って、常に新しいインプットがなければ、結果を出すアウトプットはできないこと、また、学ぶことにおいては、書籍、セミナー、オンライン動画とさまざまな学習法を取り入れて学習効果を高めることが大切なことが分かりました。多くのビジネスパーソンが、時間や場所を問わずに、欲しい知識やスキルが得られるオンライン動画は、学びの新たなスタンダードになりそうですね。本日は、ありがとうございました。

 

2人の講師が教える「Udemy(ユーデミー)」とは

「Improving Lives Through Leaning(学びで人生をもっと豊かに)」をコンセプトに掲げる米国のUdemyが運営するオンライン学習プラットフォーム。日本では、2015年よりベネッセコーポレーションが提携。最新のIT技術からビジネス、趣味まで幅広い領域をオンラインで学ぶことができる。隙間時間にパソコンやスマートフォンなどからアクセスでき、必要なときに必要なだけ学べる。

Udemyの特徴

  • ○各講座は5~10分の短編構成
  • 通勤電車やカフェで、スマートフォンやタブレットがあれば、いつでもどこでも空いた時間を有効活用できる。
  • ○分かりやすい動画解説
  • ビジネス経験を持つ実務講師が、図解や操作を見せながら解説。録画なので、早送りや巻き戻しも自由。
  • ○無期限で何度でも視聴可能
  • 講座は全て、「買い切り型」。中断してもいつでも再開できる。

 

ビジネスパーソンにおすすめのUdemy講座一覧

カテゴリー コースタイトル
前田鎌利氏の
プレゼンテーション講座
3分で一発OK!社内プレゼンの資料作成術
感情を動かす!社外プレゼンの資料作成術
熊野整氏の
Excelファイナンス講座
【 財務プロを極める 】エクセルで学ぶ財務三表モデル × 財務戦略シミュレーション
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●オンライン動画学習プラットフォーム

Udemy(ユーデミー)
URL:https://www.udemy.com/

問い合わせ先
オンライン動画学習プラットフォーム
Udemy(ユーデミー)
https://www.udemy.com/

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