団塊の世代が大量に退職を迎える中にあって、労働力の確保や技術・ノウハウの継承が問題になっている。中小企業にとってこの事態は、より深刻な問題をはらんでいる。それが、自らが団塊の世代である経営者が、引退する前に、育て上げてきた事業をどのように後継者に引き継ぐかという「事業承継」の問題である。

 

 中小企業基盤整備機構が2011年に行った「事業承継実態調査」で、事業承継の予定について中小企業経営者に聞いたところ、全体の28.8%が「明確に決まっていない」と回答。さらに「廃業しようと考えている」と答えた経営者は7.8%にも上った。

 廃業の理由(複数回答)については、「事業に将来性がない」(60.4%)、「自分の代かぎりでやめようと決めていた」(39.6%)、「適当な後継者がみつからない」(24.3%)が上位を占める。長引く景気低迷が中小企業に暗い影を落としていることが見て取れるが、「後継者難」というのも大きな要因となっていることがわかる。

 実際、「後継者が決まっているか」という質問に対する回答では、「決まっていない」が約半数(47.1%)にも上る。その理由も、「後継者にしたい人はいるが、本人が承諾していない(もしくはまだ若い)」「後継者の候補が複数おり、まだ決めかねている」といったように、候補はいるが決められないというのは、合わせても全体の約20%しかいない。半数以上が「まだ考えていない」「探している」といった状況なのである(図)。

 日本の中小企業のほとんどは家族経営のオーナー企業といわれている。零細になればなるほど、社員の中に家族の占める割合が増え、後継者の候補も経営者の子どもをはじめとする親族になってくる。そうした親族が「継ぎたくない」と拒絶したり、逆に経営者が「アイツには継がせない」と決め込んでいるところは少なくないだろう。

 こうした現状に対して、国は事業承継の際の相続税・贈与税の納税猶予制度を設けるなど支援策を実施。中小企業庁やその関連機関でも、研修・セミナーを実施したり、相談窓口を設けるなど、サポートに力を入れている。その背景には、廃業に伴う雇用減少の防止や、日本製造業の根底を支える技術を継承させようという意図がある。

「後継者がいない」と諦めてしまう前に、前述のような窓口に相談したり、専門家の意見を聞いてみることも大切だ。