2006年創業のベンチャー、エリーパワーは、家庭やオフィス向けの大型リチウムイオン蓄電池の開発・製造・販売で業界をリードしてきた。同社は今回、新たに家庭向けの大容量蓄電システム「パワーイエ・シックス」をリリースした。その安全思想に込められた企業理念、高機能化に向けた取り組みを見てみよう。

 東日本大震災以降、家庭やオフィスでの災害対策やBCP(事業継続計画)対策への関心が高まっている。中でも、いざという時のためのバックアップ電源として、またエネルギーの有効活用のため、日頃から電気を蓄えておこうという意識が高まってきている。

 2006年創業のエリーパワーは、この分野のパイオニア企業だ。これまで、2.5キロワット時の蓄電システム「パワーイレ・プラス」の法人向けリースや家庭・オフィス向け販売に取り組んできた。

家庭・オフィスで使う
電池だから安全第一

 電池の最小単位をセルと呼ぶが、一般的な蓄電システムは、システムで安全性を確保するという考え方でつくられている。

 これに対し、エリーパワーでは、セル自体の安全性を追求してきたところに特色がある。

 同社のリチウムイオン電池の正極(+極)には、リン酸鉄リチウムという素材が使用されている。リン酸鉄は、コバルトやニッケルなどに比べ、エネルギー密度はやや低いが、安全性が極めて高い。

「当社のセルは、釘が刺さっても過充電しても、発煙・発火しないつくりです。家庭やオフィス内に置くことを想定しているので、安全第一は至上命題と言えます。将来のスマートグリット社会実現に向けても、安全な蓄電池の普及は欠かせません」(吉田博一代表取締役社長)

 こうした点が評価され、同社の電池セルは、19世紀にドイツで発足した世界的な第三者認証機関、「TÜV Rheinland」(テュフ・ラインランド)の製品安全検査に合格している。

 強制内部短絡(釘刺し)、過充電、過放電など、計11の過酷な試験項目をクリアし、大型リチウムイオン電池としては世界初、唯一の「TUV–Sマーク」を取得した。

 現在、同社では、家庭向けの蓄電容量6.2キロワット時の定置用蓄電システム「パワーイエ・シックス」や産業用の蓄電システム「パワーストレージャー・テン」(蓄電容量15~60キロワット時 4ラインアップ)の製造・販売を進めている。昨年6月、年産100万セルを量産する工場を新たに竣工し、13年中にフル稼働する予定である。

 エネルギーを取り巻く環境や意識は確実に変わってきた。自然エネルギーによる電力を安定的に使用するためにも、安全・高性能な蓄電池は不可欠だ。

 創業以来、常識を超えた技術に挑戦し続け、安全性の高さを実現したエリーパワー。同社開発の蓄電システムは、エネルギーのベストミックスを実現する重要な役割を担うに違いない。