景気の回復とともに人手不足が深刻化している。それだけに限られた人材で最大のアウトプット(成果)の実現が必要で、業務のIT(情報技術) 化などを推進する動きが広がっている。生産性アップとコストダウンは表裏一体だ。IT化、自動化などで人手や時間のムダを省けば、コスト削減にもつながる。生産性アップの最新の事情を探ってみた。

 日本の労働生産性の低さはよく知られている。2012年の就業者一人当たりの付加価値はOECD加盟34ヵ国中21位の7万1619ドル(約759万円)。OECD平均を下回り、1位のルクセンブルクの56%、3位の米国の約63%の水準だ(日本生産性本部の調査)。

 それでも製造業は国際的に見て高いレベルにあるが、中堅・中小企業が多く、日本のサービス産業、非IT関連産業の労働生産性の低さが、全体の足を引っ張っている。

 見方を変えれば、日本企業には、生産性の改善によって付加価値を創出する伸びしろがまだまだ残っているということだ。

 生産性アップとコストダウンは表裏一体である。就業者一人当たりの付加価値が上がれば、その分、人件費は下がる。日常業務のムダを削り、浮いた時間を、より生産的な業務に振り向ければ、効率アップとコストダウンを一気に実現できる。

 もちろん、コストを構成する要素は人的資源や時間ばかりではない。エネルギー、資本、原材料、技術(特許)開発、設備・施設、物流、環境対策など、さまざまな要素をトータルに見直し、ムダを削り落として、付加価値を高める努力が不可欠だ。その決め手となるのは技術革新や創意工夫である。

 技術革新によるコストダウンは、エネルギー、原材料などのモノやカネ(資本)だけでなく、ヒト(人的資源)においても有効だ。ITの進歩やクラウドサービスの普及とともに、人手や時間のかかっていた業務を大幅に省力化できるソリューションが、手軽に、しかも低コストで利用できる時代が訪れている。そうした最新技術を徹底活用して、生産性アップ&コストダウンに弾みを付けたいものだ。