少子化、晩婚化によって競争が激化するブライダル業界のなかで気を吐く式場がある。都内屈指の老舗「八芳園」だ。一時は年間1000組を割り込んでいた挙式件数が、現在は2000組を大きく超えるまでに復活を遂げたのだ。その背景には、独自の取り組みがあった。従来の婚礼産業の枠を超え、「顧客と一生つながり続ける」という宣言の下で全社を挙げて挑戦する「生涯顧客化」こそが、同社の将来を占う重要な新事業となっている。

 なぜ、八芳園の業績はV字回復を遂げたのか―――。

八芳園の「生涯顧客化」事業をリードする、井上義則取締役総支配人

 改革をリードした井上義則取締役総支配人が理由として挙げるのは、顧客重視の姿勢と、それを支える情報基盤(顧客管理システム)の導入だ。たとえばお客様アンケートの結果は、従来から掲示板に貼り出すなどしてきたが、顧客データベースの整備によって館内の各端末から閲覧できるようにしたことで、スピーディな共有が可能になったという。

 もちろんアンケートだけでなく、顧客情報そのものの共有も、館内隅々にまで行き届くようになった。それによって、結婚記念日に訪れた顧客に対しても「覚えていてくれている」と思われるきめ細かい応対が可能になったという。「こうした生涯にわたるお客様とのおつきあいを支える強力なインフラとなるのが、Salesforce のシステムなのです」(井上氏)。八芳園では顧客管理システム(情報)を中心に、サービス部門(ヒト)とサービスメニュー(モノ)が三位一体となった生涯顧客化事業が進められている。

 井上氏は「新規顧客の争奪戦はいわゆるレッドオーシャンの様相がますます濃くなるのに対して、既存顧客の生涯化は無縁なブルーオーシャンそのものです」と語る。ブライダル業界に限らず、顧客の継続化は多くの企業経営にとって重要なテーマとなっており、その点で八芳園の取り組み事例は示唆に富んでいる。

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