「子どもたちのやる気を引き出す」授業を行うとして、いま注目を集めているMC型教師・東京学芸大学附属世田谷小学校の沼田晶弘先生。教師がテレビのMC(司会・進行役)のようにテンポのいいコミュニケーションによって、子どもたちをいつの間にか授業に積極的に参加させるという仕組みを編み出している。沼田先生の教室では、先生の話が終わる前に手を挙げる子どもがいて、指される前にしゃべり始める子どもがいる。沼田先生はそんな子どもたちに突っ込みを入れたり、手を挙げていない子に話を振ったり、ついには自分で話しだしたり。教師が黒板の前で教科書を片手に説明し、子どもたちは静かにノートを取るという、従来の授業スタイルとは大違いだ。「どうしたら子どもたちが集中して勉強してくれるのだろう」と頭を悩ませる先生はもちろん、「どうしたら部下が言うことを聞いてくれるのだろう」とお悩みのビジネスパーソンにとっても、沼田先生の授業から得られるヒントは数多くありそうだ。

参加する子どもの輪を広げて
簡単に答えにたどり着かせない

―MC型で授業をすすめる際、どのような点がポイントになりますか。

沼田先生(以下、沼田) 授業では一般的に、先生は子どもに「正解」を求めますよね。でも僕の場合は、必ずしも正しい答えが欲しい訳じゃありません。もちろんみんなで答えを探すんですが、その途中で考えたことや、そこへたどり着くまでの過程が大切です。できるだけ多くの子どもたちが「ああでもない、こうでもない」となった方が授業としては成功だと考えています。

 授業での発言にしても、手を挙げる子にそのまま話させる場合もあれば、場を盛り上げるために、答えを持っていない子を指名することもあります。答えにたどり着くことだけを考えれば、遠回りかもしれませんが、いろいろな考えを出し合った方が、結局は問いに対する考えが深まるし、答えへのたどり着き方も学べる。小学校は塾と違って、答えを教える場ではなく、学び方を身に付けるところだと思っていますから。