全学年で200人を超える帰国生が在籍、欧米型の論理的思考力を育成する「サイエンス科」を立ち上げるなど、先駆的な教育で知られるかえつ有明。グローバルが普通といえる教育環境で、現在力を入れているのがディープラーニングだ。

かえつ有明中・高等学校
山崎達雄 広報部長

 日本の子どもたちは、国際的な学習到達度調査での成績はトップクラスだが、自己肯定感が低いといわれる。欧米型の教育では、生徒が自ら学び、自分の考えを表明し、違う意見があれば検証するというトレーニングを積んでいる。日本の中高生はそのような思考形態に慣れていない。それだけの違いだ、とかえつ有明は考える。

 同校では、先進的にアクティブラーニングを取り入れてきた。まさに従来の日本の教育に欠けていた、能動的な学びである。

 ただし、アクティブラーニング型授業だけでは十分な知識を得ることができないという批判がある。そこで同校では今、アクティブラーニングの先にある「ディープラーニング」への取り組みを行っている。

「本校では、生徒が獲得すべき知識や学習スキル、能力などを明記した“モデル・コア・カリキュラム(MCC)”を設定しています。卒業する生徒たちが“このような能力を持っています”と、明示する教育の質の保証であり、そのMCCとアクティブラーニングを結び付けたものが、ディープラーニングなのです」と山崎達雄教諭は説明する。

知識は、自分からつかみ取るもの

多くの帰国生が学ぶかえつ有明では、学校自体がグローバル化を体現している

 ディープラーニングの授業は、すでに各教科に浸透している。例えば数学の授業。ある分野の講義が一段落すると、生徒たちはプリントに取り組む。そこで1人の生徒が教室を回り、他の生徒の疑問や質問に答えてゆく。いわば「ミニ先生」の役割だ。

 人に教えるためには、自分自身が授業の内容を理解しなければならない。一方、質問する側の生徒も「次は自分がミニ先生になれるように頑張ろう」という意欲が湧いてくる。

 このように授業がアクティブになると、生徒たちの意識は、知識を与えられる受け身の立場から、知識は自分からつかみ取るものだ、という能動的なものに変化する。

「アクティブラーニングの本質は、形としてのグループディスカッションやプレゼンテーションではなく、広く深い知識を自ら身に付けようとする意欲の上に成り立つもの。本校が目指すディープラーニングは、その知識の獲得と能動的な学びの両輪で実現されます」(山崎教諭)。

 クリティカルシンキング(批判的思考)を培うために独自の「サイエンス科」を設けているのも同校の特徴で、校内に浸透しているのは「I think..., because(なぜならば)」というフレーズ。自己肯定感のある、欧米型の論理的思考力が育っている証しである。

 また4.5人に1人が帰国生で、英語は取り出し授業を行っている。国際学級を設けず、英語をゼロから学ぶ一般生と協働のクラス編成としている。そのため一般生が刺激を受け、高校1年で海外留学する人数は学年の約1割に及ぶという。先駆的な教育は、そうして生徒の成長を後押ししている。