全世界で発生したマグニチュード6以上の地震のうち、約2割が日本で起こっている。また全世界の活火山の7%が日本にある。日本はこれまで多くの自然災害から学んできた。避けることのできない地震などの災害被害を少なくするため、さまざまな防災対策が進んでいる中、企業防災への関心が高まっている。

 内閣府に設置された中央防災会議の最終報告によると、首都直下でマグニチュード7クラスの地震が今後30年間に発生する確率は70%と推定されている。揺れによる被害は、全壊家屋が17万5000棟、建物倒壊による死者は最大1万1000人、また市街地火災の多発により最大約41万2000棟が焼失、死者は最大約1万6000人と想定されている。

 それだけでも首都機能への被害は甚大だが、問題はインフラやライフラインの被害で、発災直後は、都市区部の約5割が停電、供給能力は5割程度に落ちて、1週間以上不安定な状況が続くという。また通信に関しても、固定電話・携帯電話共に、9割の通話規制が1日以上継続され、携帯基地局の非常用電源が切れると停波になる。地下鉄は1週間、私鉄・在来線は1ヵ月程度、運行停止になる可能性が高い。主要幹線道路は、緊急交通路として使用され、一般道はがれきや放置車両などで交通まひが発生する。燃料も、非常用発電機用の重油を含め、軽油、ガソリン、灯油とも末端までの供給が困難となる。

 一方、南海トラフ巨大地震も、30年間で60~80%の確率で発生するとされる。こちらは超広域にわたる揺れと巨大な津波が発生することが想定され、被害はこれまで想定されてきた地震とはまったく異なるものになるといわれている。

災害に強い企業への
戦略的な取り組み

 こうした地震の被害想定に対し、事前防災や発災時の対応などさまざまな対策が進んでいる。中でも社会的な影響が大きいことから、企業防災への関心が高まっている。東日本大震災以降、企業の防災への意識は高まっているが、それが必要十分なものであるかどうか、定期的な検証が必要だ。

 企業防災は、大きく「防災」と「事業継続」に区分けされる。「防災」とは地震による被害を最小化するもので、「事業継続」とは文字通り災害時の企業活動の維持や早期回復を目指すものだ。

「防災」に関しては、まず従業員や顧客の生命の安全が優先される。食料品、医薬品とトイレなどの備蓄、そして建物の耐震性の確保だ。さらに、自社が被災することで周辺に被害が及ぶことを防ぐ二次災害の防止、また地域自治体との災害時支援協定などを結ぶことで、地域への貢献・共生することも、企業の防災には求められている。

「事業継続」の形は企業ごとに異なるが、事業継続計画(BCP)の策定が第一で、重要な業務が中断しないこと、中断しても可能な限り短い期間で再開することが重要になる。具体的にはバックアップのシステム、迅速なオフィスや要員の確保など、事業内容や企業規模に応じた取り組みが必要だ。

 従業員や顧客、地域社会への影響を考えれば、もはや企業防災の不備は、企業評価の低下につながる時代。経営レベルで戦略的に取り組む課題なのだ。