中学受験は、長年続いた受験率の低下が止まり、今春の学校説明会は活況を呈しています。大学入試の変革もあり、来年2016年の受験は、従来とはやや異なる様相です。この変化に受験生はいかに対応したらいいのか。2015年入試動向や中長期の変化から、来年の受験を見通していきます。

倍率緩和が止まった首都圏の中学入試状況

 首都圏の中学受験は2015年入試で受験率が横ばいとなり、リーマンショックの影響で09年以降続いていた下降の流れが底を打ったように思われる。

 15年入試を各校の主たる入試(2月1日がほとんど)でみると、女子校9%増、男子校2%減、共学校1%増。女子校のサンデーショックの影響をのぞくと全体では前年並みとはいえ、学校ごとに言えば増加に転じたところも少なくなかった。

 つまり、中下位校の緩和が下げ止まりをみせる一方、上位校集中という現象は変わっていない。

 ここ数年の入試状況の変化の基軸として押さえておきたい点は、実倍率だ。近年の傾向をみると、前年の入試状況が2.5倍を超えるとやや敬遠気味になり、逆に2.0倍近くになると増加傾向がみえることだ。

 この点、15年入試がサンデーショックで女子上位校の入試状況が特殊な年だっただけにやや読みにくいが、幸いなことに多くの女子上位校はサンデーショックを和らげ、15年入試の実倍率を例年と同じ程度に調整した結果、乱高下は避けられた。

森上展安(もりがみ・のぶやす) 森上教育研究所代表。1953年岡山県生まれ。早稲田大学法学部卒業後、東京第一法律事務所勤務を経て都内で学習塾を経営後、88年から現職。中学受験生の父母対象に「わが子が伸びる親の『技』(スキル)研究会」セミナーhttp://oya-skill.com/をほぼ毎週主催。著書に『10歳の選択 中学受験の教育論』『中学受験 入りやすくてお得な学校』(ダイヤモンド社)。

 16年入試も、こうした実倍率を読むという受験生心理が働くと思われる。

 男子校では15年には、そうした隔年現象を抜け出て、増加基調を維持して人気校化した学校が鮮明になった(具体的には本郷と成城) 。もう1つ顕著なのが、午後入試での人気校の出現だ。結果として、2日、3日の午前入試校の受験者数が大きく減少、低倍率になった。

 こうした後半日程の人気校の倍率は3倍程度になる一方、1日に関しては午後入試の人気校も1.0倍台か2.0倍台そこそこで、リスクヘッジしやすいことも受験生が増える要因になっている。

 この大きな構造は変わりないと思われるので、16年入試でも、低倍率校でヘッジをうまくとる作戦をおすすめしたい。

 なお、男子は特に東京大学合格の大幅伸長校に人気が集まるため、今年顕著に伸びた学校の倍率が厳しくなると予想される。

 女子校については、15年入試のサンデーショックで改めてキリスト教主義教育の人気の高さが強く印象づけられた。

 また、難度の高い上位校への受験生の集中は明らかに起こっていて、難関上位校を除けば、多くは2.0倍そこそこの実倍率だ。

 女子校では、文科省のスーパーグローバルハイスクール指定校制度は追い風になった。今春新たに指定校になった学校も、16年入試では注目されることになるだろう。

 また、センター試験に代わる大学入学希望者評価テストのあり方について、合教科総合形式の適性テストが想定されていることも、受験生保護者の関心を引きつけつつある。

 直前の知識ツメコミ型入試から、やや中長期の学習を前提としたものにかわることになり、高校だけの学習よりも中高を通じた学び、もっと言えばすべての学校での学び方につながる変化といえる。

 その意味で、中学と高校の連携がはかられている学校を選択する方向に人々の関心が向かい、中高一貫校の特長が見直されていくことになろう。

 進学校としては、ツメコミ評価からプロセス評価へと大学入試がかわることで、本来の教育フィールドに立ち戻り易くなる。

 大学入試が変わる以上、中学入試も中長期的には、従来型の教科テストだけの入試から、適性型へと変化していくことになると思われる。

 


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