旧正月を目前に控えた1月24日、台湾の台北アリーナで音楽の祭典「第11回KKBOX Music Awards」が開催された。アジアNo.1の定額制音楽配信サービスを手掛けるKKBOXが主催するイベントで、2015年によく聴かれたアーティスト15組が参加。日本からはSEKAI NO OWARI、韓国からはApink、タイからはToR+も出演し、約1万人の音楽ファンを魅了した。


そのKKBOXが設立されたのは2004年のこと。第1回のイベントはたった300名程度だったというのだから、この10年で目覚ましく成長を遂げた会社のひとつなのである。CEOのクリス・リン氏にインタビューのチャンスを得た。

――このイベントも11回を重ねますが、これほど大きなイベントになると思っていましたか?

クリス・リン KKBOX Co-Founder & CEO 台北出身。ボストン大学卒業後、スタンフォード大学オペレーションズ・リサーチ修士取得。帰国後2000年に起業、04年にKKBOXをローンチ。

クリス・リン氏(以下クリス) まさか(笑)。このイベントはお金を払ってくれるリスナーへの恩返しのつもりで始めたもので、当初はリスナーも少なく300名程度でした。今年は1万人以上を招待しましたが、それでも足りず、生中継をすることでアジア各国のリスナーにも観てもらえるようにしたんです。

――各国のファンが自国の言葉でツイートしながら見ている様子も伺えました。ここまで支持される理由はどこにあるのでしょうか。
クリス いろいろなアワードがありますが、この音楽賞には審査員がいません。100%ストリーミング数でランクが決められるので、非常にフェアだということ。実力がある人しか出られないので、アーティストからの信頼も厚いのです。また、単なる受賞式ではなく、各国で生中継されるので、アーティストにとっても、いいプロモーションの場として運営できています。

――会社設立当初は、音楽業界での風当たりも強かったようですが。
クリス そうですね。10年前にリスナーがCDしか買わない時代に、ストリーミングとは何かを説明し、さらに定額制で毎月お金を払ってもらう仕組みを理解してもらうのは本当に大変でした。でもそれ以上に大変だったのが事務所やレコード会社で、彼らはCDを売らなくちゃいけないのに、ストリーミングなんてもってのほか。そんなことをしたら、ますますCDが売れなくなると、いい顔をしませんでした。しかしそのうちに、ストリーミング配信したほうがCDも売れるということが事実として表れてきて、そこからですね、彼らの意識が変わってきたのは。

――そういう相乗効果が生まれるのは面白いですね。
クリス 音楽のパッケージが、アナログからCD、CDからデジタルと変わってきて、その過渡期は大体15年くらいかかっています。そして今はデジタルであるがゆえに、可能性は広がっていると感じています。アーティスト側も先にデジタルで展開してからCDを作ったり、大手に所属していなくても楽曲を発表できたりと、いろいろなチャンスがありますから。 

「第11回KKBOX Music Awards」に出演したアーティストたち。左から、MP魔幻力量 Magic Power(台湾)、SEKAI NO OWARI(日本)、A-LIN(台湾)

――KKBOXは音楽配信だけでなく、雑誌を発行したり、チケットサービスを行ったりと周辺のビジネスも展開していますね。
クリス ビジネス戦略として広げているというより、リスナーのニーズに応えているという感覚です。例えば、リスナーがコンサートを観たいのに台湾ではいいチケットサービスがない、という意見に応えてチケットサイトを作ったり、もっと音楽の情報がほしいという意見があって雑誌を作ったり。あくまでもリスナー目線で展開しています。
 今、台湾ではコーヒーが人気です。となるとコーヒーを飲むリスナーが多いわけだから、台湾のコーヒーショップでKKBOXの音楽が流せないかとか、ここ数年、台湾でも日本と同じようにマラソン人口が増えているので、マラソンしながら音楽を聴けたらとか、考えますね。

――そういったリスナーのニーズはどのように拾っているのでしょうか。
クリス 顧客のデータベースの分析はかなり力を入れてやっています。たとえばGPSのデータを開放しているリスナーがいれば、どんなところで聴いているのか、走りながら聴いているのかなどもわかりますし、いつも通勤時間帯で聴いていた人がまったく聴かなくなったら生活の変化があったのではないかと推測できます。丁寧に分析して、リスナーが飽きずに楽しめるサービスを提供することが重要です。

――今後、音楽配信サービスはどうなっていくとお考えですか。
クリス まず、曲ごとのダウンロードは減って、その分ストリーミング、月額制の音楽サービスは増えていくと思います。そうなることでリスナーが聴ける音楽のジャンルや曲数が広がり、アーティストやシンガーソングライターも増えていくと思います。

――こういったサービスは若い人向けというイメージがどうしてもありますが、中高年に向けたメッセージをお願いします。
クリス まさに私自身が40代で(笑)。結婚して子どもがいて、家庭を持つようになると音楽を聴くこと自体が減ってしまいます。それでもどの時代のどの世代の人でも、大学生や高校生のときなど、音楽を聴く“黄金期”、リアルタイムに音楽をたくさん聴く時代があったはずです。そんな自分の黄金期で聴いていたアーティストの曲をぜひKKBOXで聴いてほしい。きっと当時の感動が蘇ってきますから。

*KKBOXは1500万曲以上を配信中。きっと聴きたい曲が見つかるはずだ。1カ月間は無料で視聴できるので、試してみることをオススメする。

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