算数を丸暗記で乗り切ろうとするのは子どものSOS
菊池さんはまず最初に、算数が苦手な子どもの共通点は「丸暗記で乗り切ろうとしている状態」だと伝えます。そして、なぜ丸暗記に頼るしかないのか、原因を知るのが大切だと強調。
子どもにとって丸暗記は、理解できないからやむを得ず取っている生存戦略、いいかえればSOSのサインを出している状況です。親がただ丸暗記を責めたのでは、子どもは余計追い込まれ、投げ出したり自信喪失したりしかねません。したがって、原因を分析してしっかりとした解決策を取る必要がある、と話します。
なぜ丸暗記に頼るのか、4つの原因とは?
子どもが算数で丸暗記に陥ってしまう原因を菊池さんは4つ挙げます。1つ目は、数感覚・量感、空間認識力が育っていないことです。数字をリアルなものとして感じる数感覚が育っていないと、小学3・4年生時に「算数の壁」でつまづくことが多いそうです。また、空間認識力は、算数・数学の成績を向上させることが研究で確認されている、と菊池さんは話します。
2つ目の原因として挙げるのは、脳のワーキングメモリーの不足。ワーキングメモリーが足りていないと、脳内での複数の処理や理解が難しくなります。3つ目の原因は、詰め込み教育の弊害です。算数の土台ができていない状態で大量の宿題が課されると、こなすのが精一杯で、理解まで及ばなくなります。
そして、4つ目は苦手意識という悪循環から抜け出せないこと。算数の問題ができないことで不安になり、不安があるからできなくなるという状態です。この不安は、日々大人の声かけが影響している可能性がある、と菊池さんは語ります。
数感覚と空間認識力を遊びや日常の中で育てる
対策法の1つ目として菊池さんが挙げるのは、具体的なものでイメージをつくること。低学年では、おはじきや積み木、果物などを実際に並べながら問題を解いていくことが効果的だと説明します。実物を見て、触って、数える経験を重ねることで、数の量感が育てられます。
中学年では、買い物が最高の教材です。予算内でお菓子やジュースを選んだり、いくらになるかを考えたり、といった実生活での体験が算数につながります。また、空間認識力を育てるには、折り紙やプラモデル、工作などがよいそう。手を動かしながら、二次元のものが三次元に変わっていく過程を体験することで、算数の土台がつくられるといいます。
高学年では、割合や速さなど抽象度の高い概念を日常と結びつけることを、菊池さんは勧めています。たとえば、割引になっているアイスの価格や、時速60kmで走っている車が進む距離など。具体的なものでイメージさせることで、式や計算の本質的な意味を理解できるようになる、と話します。
頭の中を整理できる、声に出して解く方法
菊池さんは対策法の2つ目に、ワーキングメモリーの負担を減らすのに、声に出して考える方法を紹介します。算数の問題を頭の中だけで考えようとすると、ワーキングメモリーへの負荷が大きくなります。しかし、声に出しながら考えることで頭の中が整理され、解きやすくなるとのこと。
問題文を声に出して読むだけで、解き方に気づく子どももいるといいます。さらに、解いている最中に考えていることを実況中継するように声に出すのも効果的。親にとっても、子どもがどこでつまずいたのかを把握しやすくなるのが利点です。
ただし、子どもが声に出して考えている途中で、「そこは違う」などと口を挟まないことが注意点だと菊池さんは付け加えます。親の役割は採点者ではなく観察者。間違いを指摘するより、できている部分を見つけて伝える姿勢が大事だということです。
つまずきポイントを探すための子どもへの問いかけ
3つ目の具体策は、子どものつまづきポイントを探すこと。算数が苦手な子どもに今の単元を何度も練習させるだけでは、解決しない場合があります。2〜3学年前の内容に穴がある状態で、より高度なことをやろうとしても、理解しにくいためです。
菊池さんは、つまづきポイントを探すのには、確認の仕方が大事だといいます。子どもに尋ねる際は、「これわかる?」と聞くだけでは不十分。子どもはわかっていなくても「わかる」と答えられるからです。
たとえば「3×4はどういう意味か教えてくれる?」という問いかけをして、自分の言葉で説明してもらうようにします。式の意味を自分の言葉で説明できるかどうかが、理解を見極めるためのわかりやすい判断基準です。
「失敗しても大丈夫」という環境をつくる
菊池さんは、4つ目に一番大事なポイントとして「失敗しても大丈夫」という環境づくりを挙げます。菊池さんは、子どもは本来、失敗を恐れずに試す力を持っている一方、大人の声かけによって挑戦を避けるようになる傾向があると指摘。
「なんでわからないの」「さっきやったでしょ」といった言葉が繰り返されると、子どもは親の顔色をうかがい、自分で考えることをやめてしまう場合も…。そこで、菊池さんは「どこで詰まったのか教えてくれる?」「ナイスチャレンジ」といった声かけに切り替えることを提案します。
できた・できないの結果だけでなく、間違えた点を考え直したプロセスを認めることが、学習意欲を育てるポイントになる、と強調。簡単な問題を全部正解するより、間違えても難しい問題に挑戦する方が評価される。そんな環境づくりを菊池さんは勧めます。
まとめ
算数が苦手なのは、生まれつきの才能によるものではなく、日常生活や環境と深く関係している、という菊池さん。今回は、家庭ですぐに取り入れられそうな対策法がいくつか紹介されました。ぜひ一つずつ実行してほしい、と最後に菊池さんは伝えています。(次ページに解説動画あり)
