聖学院中学校・高等学校
伊藤大輔校長

 聖学院中学校・高等学校が目指すのは、本当の意味での「主体性」を持った生徒の育成だ。

 伊藤大輔校長は、「『叱られないため』『良い成績を取るため』といった条件に縛られた行動は、他者の価値観に支配された不自由な状態です。そうした世間の枠を剥がし、今ここで自分が何をすべきかを発見して決断することこそが、真の自由であり主体性なのです」と語る。

 生徒たちは無意識のうちに、親の期待や世間の流行といった「他者の言葉」で世界を語っていることが多い。それに気付き、借り物ではない「自分の言葉」を内側から紡ぎ出せるようになること。それが同校の掲げる「Only One」の体現であり、大学進学の先、社会に出てからも通用する確かな力となる。

自己決断を促す新行事
既成概念を壊す実体験

 この深い教育哲学を実践するため、多様なプログラムを展開している。2026年度から新たに始まった「探究デー」もその一つだ。全学年を対象に実施され、教員が用意した探究ラボや自学自習、既存のプロジェクトなどから「自分が今やるべきこと」を選んで学ぶ。受動的に授業を受けるだけの環境に余白をつくり、生徒に自らの学びの「ハンドルを渡す」という実験的な試みだ。これは単なる自由時間ではなく、「自分が何をすべきか」を問い続ける自己決断の練習として位置付けられている。

 また、40年続く中3の「糸魚川(いといがわ)農村体験学習」や、高1の「ソーシャルデザインキャンプ」といった探究型の宿泊行事も、生徒の既成概念を揺さぶる重要な機会だ。中3では新潟県糸魚川市を、高1では神奈川県真鶴町や静岡県沼津市などを訪れ、フィールドワークを行う。伝統工芸や漁業、耕作放棄地など、地域独特の社会課題に直面し、解決に取り組む人々に直接インタビューを実施する。こうした体験を通じて、都会で通じる言葉が全てではないことや、自分の視野の狭さに、生徒たちは気付いていく。「自分が正義だと思っていたものが違った」と気付き、これまでの枠組みから抜け出す。「キリスト教でいう『悔い改め』の本質であり、自分と向き合い、新たな成長のきっかけを得るための大切なプロセス」と伊藤校長は語る。

 こうした学びが結実する場の一つが、21年度に新設された高校の「GIC(グローバルイノベーションクラス)」だ。GICでは、多様な社会課題に対して深い視点から物事を捉え、「自分の言葉を紡ぎ出して文章化する」機会が豊富に用意されている。その結果、高校生でありながら大学での研究にも通じるような、学問の本質的なリテラシーを持った生徒が、確実に育ってきている。

 大学合格をゴールとせず、その先の社会で通用する力を磨く聖学院。他者の価値観による支配から自由になり、自らの言葉を獲得した生徒たちは、己の揺るぎない信念をよりどころとし、社会に新たな価値をもたらしていくだろう。

2026年5~6月に計3日間実施された「探究デー」の様子。生徒が主体的に学びを選択し、深める機会が用意された
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聖学院中学校・高等学校
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