吉祥寺湧水中学校・高等学校
菊池健太郎学校長

 校内に足を踏み入れて歩くと、そこに教壇はない。黒板に向かって整然と並んだ机や椅子もない。あるのは、緩やかなカーブが特徴的な机や、明るいカラーの椅子、3Dプリンター。そしてガラス張りの部屋の中にいるのは、友達とパソコンを開いて談笑する生徒や、ラフな私服を着た教員たちだ。

 2027年春の校名変更・共学化を控え、武蔵野市の一角に位置する仮校舎は今、そんな空間になっている。コンセプトは「FINDER BASE」。「知識を受け取る人ではなく、問いを見つけていける人に」という意味を込めた“Not students, Be a FINDER.”という言葉を体現する場だ。

 吉祥寺湧水が目指す教育の根底には、菊池健太郎学校長自身が、教育系スタートアップの現場や、親として中学受験を体験した実感、従来型の教育への疑問を出発点に、これまでの教育を覆すような学校づくりをしたいという思いがある。

「社会に出てみると、重要なのは大学名ではなく“who I am”という問いに答えられるかどうか。AIが瞬時に答えを出す現代においては、自ら問いを立て、考える力がますます重要になってきます。だからこそ、熱中できるものを見つけられる多様な機会を、6年間の中で戦略的に設けています」と菊池学校長は力を込める。

教員の半数は民間出身
時代の変化を見据える

 全教員の約半数は、社会の変化にもまれ、これまでの教育を変えていく必要性を実感した民間出身者。そのキャリアは、IT企業、外資系メーカー、映像制作など多彩で、こうした教員と、長く教育現場で勤めてきた経験豊富な教員が共に20~30年後の生徒の幸せを考え、独自の教育プログラムを設計している。

 授業では、対話を重ねる双方向の学びを重視。他者の意見に耳を傾けつつ、自分の考えを深め、発信する。一方、学内予備校ではAIも活用して弱点を把握し、オンデマンドの授業を提供するなど、個別最適な学びの機会を提供。基礎学力の定着にも力を入れる。

 さらに部活動は、中学3年間のうちはバレー、バスケ、美術、料理など、さまざまな部活を柔軟に移動できるようにする。早くから一つの活動に絞るよりも、いろいろな体験をして、自分自身の心や体の感覚を知ってほしいとの思いからだ。

 従来の学校教育の概念を覆す校舎や授業、課外活動に期待も高まる一方、「わが子はなじめないのでは」と心配する保護者も中にはいるという。だが、実は「FINDER BASE」での学校生活が始まってから、不登校の生徒はいないのだという。

「この空間は今までの学校と違って、どこにいても、何をしてもいい。だから保健室登校だった生徒や、引っ込み思案だった生徒も、自分の居場所を見つけて笑って過ごせるようになっています」(菊池学校長)

 自分は何者で、どう生きたいのか。どんな生徒にとっても、その答えを見つけ出せる6年間が待っている。

「FINDER BASE」の各空間は、使い方の自由度が高い。机や椅子を移動させたり、複数のクラスを連結したり。授業や活動によって、活用方法は無限だ
●問い合わせ先
藤村女子中学・高等学校(吉祥寺湧水中学校・高等学校)
〒180-0004 東京都武蔵野市吉祥寺本町2-16-3
TEL:0422-22-1266
URL:https://kichijoji-yusui.ac.jp/