都立高校入試で、英語のスピーキングテストが導入
2024年3月23日、JR立川駅から徒歩5分ほどのところにあるホテル日航立川東京で「早稲田アカデミー高校入試報告会多摩地区」が行われた。広い宴会場に早稲田アカデミーの生徒と保護者が集まり、熱心に東京西部地区の高校入試の現状分析を聞いていた。
最初に、高校入試を振り返ってと題して、高校入試を取り巻く環境について語られる。登壇したのは望月悟史高校受験部長。
高校受験対策は中学3年の夏から本格的になっていく。それまでの貯金がある生徒もいるが、夏休みに集中して頑張って秋以降に偏差値がぐんと上がる生徒も多い。中学受験は公立小学校の内容とはまったく違うものを学ぶので3年間かかるが、高校受験は公立中学のカリキュラムの延長にあるものが入試に出るため、短期集中で受験勉強が間に合う生徒もいるだろう。
昨今は中学受験では校風で学校を選ぶことが増えているが、高校受験では、通学の期間が短いことや体力や年齢的な問題もあって、成績で受験校を選ぶ傾向が強い。
その高校入試で多摩地区の受験生たちにとって影響が大きいのは、都立高校入試で英語のスピーキングテスト「ESAT-J」が導入されたことである。2023年にはじめて実施され、2024年は2年目であった。配点は5教科1000点満点に加えて20点なので合否に大きくは影響しないが、入試で英語を話さなければいけないのは受験生たちにとっては心理的な負担があっただろう。
早稲田アカデミーは高校入試で早稲田と慶應の系列高校を中心に、私立難関校で圧倒的な合格実績を出している。今年も早慶附属高校で1554名、MARCH附属高校で1789名。また、都立・県立最難関7校の日比谷、西、国立、戸山、横浜翠嵐、県立浦和、県立千葉に359名が合格している。
私立附属高を第1希望にすると3教科の対策だけでいいと考えがちだが、早稲田アカデミーでは5教科をしっかり勉強し、私立だけではなく、国立や都立も受験できるようにすることを推奨している。
早稲田アカデミーの教育理念は「本気でやる子を育てる」である。進学塾なので志望校に合格させることを第1の目的としているが、受験対策を通して、子どもの成長をサポートしたいと考えている。
東京都の高校の授業料無償化は、高校選びにどう影響するのか
「首都圏私国立高校入試概況」については、平木晶也ExiV御茶ノ水上席専門職が話した。
新教育要綱で3年間学んだはじめての受験生が今年、受験を終えた。10年前とはまったく違う内容の入試になっている。今までなら出題されない範囲も都立入試に入ってきているため、全体的に私立の入試に近づき、難易度が若干上がったようだった。
また、東京都の高校の無償化に関しては、今年の受験生にはあまり影響がなかったようだ。なぜなら、無償化の発表は2023年12月で、受験勉強も終盤であったからだ。ただ、推薦で私立併願校の合格を取っていて、そのあと都立を受けるとしても、私立でもいいじゃないかという選択をする受験生は若干いたようだ。
都立高校入試は男女別定員が撤廃され、男女合同定員に
最後に、「都立高校入試概況」については、国立校の村上真載副校長が話した。都内には約650校の公立中学があり、受験者人口は約7万8000名。この数年、都内の中学3年の数は少しずつ増えている。それに合わせて、都立高校の募集人数は4万6035人で前年から400人ほど増えている。ここでは全日制普通科の話をする。
一般入試の前に行う推薦入試の倍率は男子2.6倍、女子3.19倍。私立の推薦入試では4倍を超える入試もあるので、それに比べると低めとなる。一般入試は男子1.42倍、女子1.37倍で両方とも例年と変わらない。
募集の増減で1クラス増えたのが多摩地区では小平と狛江だ。反対に学級を減らしたのが富士森、日野、清瀬だ。
都立高校の主な変更点は、まず、今まで男女別の定員だったのが、合同の定員になったことだ。つまり性別関係なく、得点順に合格していく。一般入試も推薦も今年から完全に男女合同となった。
進学指導重点校の入試では、独自問題への対策が不可欠
推薦入試は、応募者は2万3480人。集団討論はコロナ禍でなくなっていたが、今年から一部の学校で復活している。多摩地区では東大和南、調布南、永山などが集団討論を行った。
ちなみに推薦は定員の2割ぐらいで狭き門だ。多摩地区の最難関の国立は、定員316名中、推薦は64名。推薦でも配点を変えた高校もあり、多摩地区だと国分寺が変えた。立川の創造理数科の推薦入試はレポートを書かせ、それに対して質問をする。定員まで合格者を出すわけではなく、今年は6名のみが合格した。
一般入試を見ていこう。全日制167校の受験者数は3万9054名で、前年度に比べて554名減った。都立への出願のあとに私立に合格し、そちらに進学をするため都立入試を欠席するというケースもある。都立入試の欠席率は令和3年から増え続けており、今年は6.8%になっている。ただ、多摩地区は私立校が都心よりも少ないので、欠席率は低くなる。
入試問題は都の共通問題が出題されるが、進学指導重点校の英語・国語・数学の主要3科目では独自問題を作成し、出題する。多摩地区だと国立、立川、国分寺、八王子東が該当する。理科と社会は共通問題だ。
もちろん、自校作の問題の方が難しい。そのため、これらの自校作問題出題の高校を狙う場合、英語・国語・数学の3科目の勉強に力を入れる必要がある。そのため、中学2年までに理科と社会を固めておくことがとても重要になる。
難関高校の合格には、実技4教科の内申点も重要
この一般入試も学力検査だけではなく、内申点も加味される。つまり、中学での成績が入試に影響する。学力検査で課される科目(英語・数学・国語・理科・社会)は1倍、課されない科目(美術・体育・音楽・家庭技術などの実技系の科目)は2倍となる。全体の割合は学力検査700点、ESAT-J結果20点、調査書(内申点)300点である。
では、多摩地区の都立高校ではどのぐらいの内申点が必要となるのだろうか。たとえば国立だと内申点が65点満点中、60点以上が目標であり、5教科でオール5で25点だとしてもその他の科目で35点以上を取る必要があるから、実技系の科目もオール4以上が求められる。
早稲田アカデミーは都立高校では日比谷79名、西71名、国立70名、戸山61名、国分寺25名、立川21名となっており、日比谷・西に関してはトップクラスの合格数だ。中学3年向けの都立必勝コースが設置されている。6月22日に説明会があり、8月31日には都立必勝選抜テストがある。この必勝コースは合格率が高く、多摩地区の最難関都立高校、国立高対策(国立会場)は70.9%の合格率となっている。そういった早稲田アカデミーの取り組みが紹介され、会が終了した。
早稲田アカデミーの高校入試報告会多摩地区に参加して
早稲田アカデミーの入試報告会はアクセスがいい場所で行われ、来場者への配慮が感じられる。
大きなスクリーンに映し出されるデータ、配られる資料はとても見やすく分かりやすい。登壇者も話術のスキルが高く、淡々と話すのではなく、ちょっとした時事的な話題などを交えながら入試動向を説明していくので飽きることがなく、最後まで聴くことができた。
また、難関国・私立高校対策に強い塾でありながら、都立対策の話にもボリュームがあり、中堅校についての言及もあった。多摩地区で高校受験を控える子どもとその保護者には、ぜひ参加してもらいたいイベントであった。