中国合弁認可が遅れ、中期経営計画で示した2015年度の世界販売台数90万台を85万台へ下方修正した。その真意について聞いた。

富士重工業社長 吉永泰之<br />中国を諦めたわけではない<br />合理的判断で米国増産に注力Photo by Kazutoshi Sumitomo

──昨春から進めてきた中国自動車メーカー、奇瑞汽車との大連における生産合弁計画の認可が下りない。中国進出を諦めたのか。

 私は合理主義者だ。中国進出を諦めたわけではないが、物事には区切りが必要だ。1年にわたって、従業員30人を中国プロジェクトに張り付けたが、好結果は得られなかった。幸いにも、好調な米国市場向けの生産が追い付いておらず、今は米国増産に人的資源を振り向けるほうが得策と考えた。

──今年に入って、河北省の曹妃甸(そうひでん)エコパークに参加する計画も浮上していたが。

 日中友好プロジェクトの一環として、そういう話が持ち込まれたのは事実。パートナーが奇瑞汽車で、進出する機会があるならば検討しないこともないが、現段階の進捗状況については知らない。

──12年3月期に最終利益384億円を確保した。富士重工業と同様に国内生産比率が高いマツダは最終損失1077億円と低迷した。両社の明暗を分けた要因は何か。

 輸出比率の高い当社にとっても円高進行は打撃だ。それでも好調な要因は、主として三つある。高単価を維持できるブランド力、工場のフル操業が続いていること、値引き販売をしないことだ。日米共に販売は好調で、むしろ好調過ぎることが組織の緩みにつながることを懸念している。常に、最悪のシナリオを想定しつつ緊張感のある経営を心がけている。