「航空機事業には優秀なエンジニアが多い」(近藤副社長)ため、改革の成果が出やすいという(写真はボーイング787)
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「スバル」のノウハウを飛行機にも──。富士重工業が自動車事業のノウハウを生かし、航空機事業の効率化を進めている。

 富士重は7月に日本にも導入された最新鋭旅客機ボーイング787の中央翼の製造も担当しており、その技術力は高い。しかし、航空機事業は国の防衛にも深くかかわり、採算性よりも安全性のほうが重視される。開発期間も「自動車の3~5年に対して、10~20年」(富士重関係者)と長い。

 こうした事情もあって、富士重に限らず、航空機の製造を担う会社や事業部門が、自動車に比べて閉鎖的、硬直的な側面があることは否めない。

 そこで、富士重は2008年から自動車製造のノウハウを生かし航空機事業の体力強化を始めた。指揮するのは自動車の生産を一貫して担当し、現在は航空機事業を兼務する近藤潤副社長だ。

 まず手をつけたのが、自動車業界では当たり前になっている、部品在庫の縮小。部品在庫の状況を「徹底的に“見える化”した」(近藤副社長)という。どこにどういう在庫があって、なぜそれだけの量をそれだけの期間持つ必要があるのかを把握し、改善したのだ。

 そのために、部品メーカーに足を運び、より短い頻度での納入を頼み込んだ。

 さらに、たとえば6ヵ月分をまとめ買いして、すべて富士重の倉庫に置いていた部品を「まとめ買いの契約だけしておいて、搬入は随時」に変えるなどの工夫も凝らした。こうした見直しによって、在庫は20%減少した。

 成果は在庫の縮小だけではない。生産現場の効率化も進められた。

 1分ごとに作業を解析する仕組みを導入して、生産を遅らせるネックがどこにあるか洗い出した。一例には、作業場間をつなぐ部品の搬送装置がある。動きが遅いことがロスになっていたため、搬送装置のモーターの能力を上げた。

 これらの改善の積み重ねの効果はてきめんだった。

 これまで月に7台生産していた航空機777の中央翼を8・3台まで増産してほしいという要求がボーイングからあった。従来なら新規に10億円ほど投資して生産設備を増強しなければならなかったが、投資なしで既存の生産設備で増産に対応できた。そればかりか、それまで昼と夜で従業員が交代する2直体制で毎月7台を生産していたのが、現在では1直体制で8・3台を生産している。

 ネックを改善し、大きな投資なしに生産量を増やすという効率化策は、富士重の北米工場でも活用されているノウハウでもある。

 日本の航空機メーカーの競争力は現状ではかなり優位にあるが、韓国や中国のメーカーが力をつけ始めているのも事実だ。円高で日本でのものづくりに逆風が吹くなか、自動車のノウハウで追随をかわす構えだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 清水量介)

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