7000万人の来場が見込まれる史上最大規模の上海万博。“中国上海”で行われる“最大規模”の万博だからこそ、そこには想像以上の混乱、波乱も伴う。

 正確な情報がつかめないことによる混乱は上海万博が始まる以前から指摘されていたが、過去最大の1万3000人の記者を受け入れるメディアセンターでも混乱なしでは済まされない状況となっている。

記者証発行の遅れに
苛立つ海外メディア

 プルル、プルル――、フロア全体に響き渡る複数の電話の呼び出し音。だが、誰かが電話に出る気配はない。開幕式当日の4月30日、上海万博に設置されたメディアセンターでは終日電話が鳴りっぱなしだった。

 ドンドン、ドンドンと扉を叩く音も絶えることはない。「万博登録事務所」の前にできる人垣、その多くは記者証についての問い合わせだ。そのうちのひとりの記者、アメリカ人の男性はこういう。

「アクレディットカード(記者証)を申請したのにまだ手渡されていない。もう3日もここに通い続けている。明日5月1日の取材はできるのだろうか…?」

ジリジリさせられた記者も少なくないメディアセンター

 彼が叩く扉にはしっかりとカギが掛けられている。担当者はいるのか、いないのか。しんと静まり返り反応はない。が、しばらくするとなんとその扉が開いた。どうやら中にはかなりの人数のスタッフが作業をしているようだ。

 カギをかけ、対応しない理由を「担当者が不在だからだ」と説明する。その担当者が、どこに行ったのか、いつ戻るのか、知るスタッフは誰もいない。

 記者証がなければ会場内での取材はできない。それを手に入れようと発行待ちの記者らがメディアセンターに詰めかける。だが、このアメリカ人男性のように毎回空振りに終わり途方に暮れる記者も少なくない。

「一体、どうなってるんだ!」とキレる外国メディアに、スタッフのひとりのとった行動はまるで“目が点”だった。「パスポートの写真と、記者証の写真はよく似ている。名前が間違っているだけだ」――。他人のカードを平気で渡そうとしたのだ。パーマがかかった髪型や、その色、メガネを掛けた風貌は決して似ていないとはいえない。他方、記者証に打ち込まれているのは、本人の名前と写真だけ。本人確認は非常に低いレベルで行われている。