過去のどうしようもない悩みや問題について考えてしまい、思考が進まなくなることは誰しもあるだろう。それが、時間のムダとわかっていてもだ。そんなモヤモヤした悩みを解決する思考法を紹介する。※本稿は、岩尾俊兵『経営教育 人生を変える経営学の道具立て』(角川新書)の一部を抜粋・編集したものです。
「価値創造の民主化」という革命
昭和の経営が世界を驚かせた理由
戦後の日本は戦争に負けて在外資産が凍結され、植民地も失い、国土を空襲され、2度も原子爆弾を落とされ、土地もなく、石油も出ないという、ないない尽くしの国でした。

それでも結果的には、そこからわずか20年ほどで世界第2位の経済大国にまで成長します。1人当たりGDPまで考慮すれば、80年代には、日本は世界で最も豊かな国といえるほどになりました。
戦後日本の急成長を支えたのは国民の脳みそだけでした。国土から石油は出なくても、日本人は1億個の脳みそから価値を生み出していたわけです。そして、この状況を作り出した要因の1つが、筆者が「価値創造の民主化」と呼ぶ経営思想でした。
昭和の日本を代表する企業の経営手法には不思議なほど共通点があります。具体的には温情主義経営、経営家族主義、トヨタ生産方式、ワイガヤ、日本的品質管理、アメーバ経営、QCサークル活動、改善活動、三方よし経営…。
これらには「価値創造の民主化」と表現できる共通の思想が見え隠れするのです。ただし、あくまでこれは理念であって完璧に実現できた会社は存在しないことに留意が必要です。