「自分たちでも新作メニューを考えますが、『マイバーガーアイデアコンテスト』や『マイカレーアイデアコンテスト』などを行って、お客様の声を反映します。ハンバーガー、カレー以外にもオムライスやスパゲティ、焼きそばなど、お客様に喜んでいただければとの思いからを基本的にメニューは店によって変えています。なぜそんなことをするかと言えば、安くて美味しいお店なら他にもたくさんあるわけで、工夫を凝らせなければ生きていけないからです」

ルネサンス期の画家、ボッティチェリをコンセプトにした、ボッティチェリ館本通り店。17店舗はどれも個性豊かだ

 ラッキーピエロの17店舗にはそれぞれにテーマが設定されている。港北大前店のテーマは「プレスリーが青春だった」。壁一面にプレスリーのポートレートが飾られていて、1950年代のアメリカの雰囲気が味わえる。一方で、十字街銀座店のテーマは「サンタが函館にやってきた」。5000ものサンタクロースの人形が出迎えてくれる。大手チェーンは店舗のデザインを統一して、初期投資の費用を少しでも抑えようと努力するのに対して、不要な投資のようにも見える。

「お客様がびっくりする店づくりを考えました。私自身が店づくりを徹底的に楽しんでいて、お客様にも間違いなくそれが伝わっていると思います。そうそう、2014年の冬から、峠下総本店でLED電球30万個を使ったイルミネーションのイベントを始めました。北海道では札幌に次ぐ2番目の規模になります。郊外型やお年寄りの多い地域、そして観光客が集まる場所といったように函館の町は多様です。それぞれの特性に合わせた店づくりという意味合いがあります」

お客様をえこひいきして長いおつき合いを

テレビ出演回数No.1の人気バーガー1日20食限定の「THEフトッチョバーガー」。高さはなんと20センチもある

 いまや「函館のソウルフード」と呼ばれるラッキーピエロのハンバーガー。老若男女のファンがこれを求めて詰めかけているが、創業当初、この人気に火をつけたのは若者、しかもバイク族だった。ツーリングで出合ったラッキーピエロの美味しさを、彼らが泊まった宿の「思い出ノート」に書き込んだことから、全国のバイク族の間でラッキーピエロが話題にのぼるようになった。

「広告宣伝費をかけられない中小企業ですから、お客様に宣伝していただければこんなにいいことはない。バイク族が宣伝してくれて、函館出身のロックバンドGLAYのメンバーが番組で紹介してくれた。そうなるとマスコミの取材も始まります。おそらく、ユニークな店舗づくりやメニュー開発があったことで取り上げられやすかった。むしろそうなるように、口コミの効果を意識した店づくりを行っていたと言えます」

 若者から観光客へと集客の輪が広がり、その結果、地元の人たちが「わが町にこんな店が……」と“発見”してくれた。「ご当地グルメ」という言葉もない時代から函館の町にこだわった店づくりを進めていた王社長は、町に根づくための仕掛けとして「サーカス団員制度」を設けた。基本的にはメール会員組織だが、ユニークなのは、ラッキーピエロへの貢献度によってランク付けをすることだ。トップに位置する「スーパースター団員」は現在、3700人を超える。