「スーパースター団員は新年会に招待され、新作メニューの試食会などにも招かれます。スタッフの対応に問題があれば、私のところに直接クレームを入れてくれるありがたい存在でもあり、まるで身内のつき合いです。実際のところ、スーパースター団員は団員全体の1割程度にしか過ぎませんが、彼らからの売り上げが全体の7割を占める。年に1~2回しか来店しない方と毎日のように来ていただいている方とが同じ扱いではおかしい。私どもを愛していただいているお客様にはそれ相応の対応が必要だ、との経営者としての自然の思いから始めたことでした」

 人口が減っていく時代には、お客様との継続的で深いおつきあいが必要だと王社長は語る。本当のお客様第一主義がラッキーピエロには根づいている。

「地域とともに」という信念が企業を生かす

ベイエリア本店(1号店)。ラッキーピエロのすべてはここからはじまった

 来年で創業30年。手間のかかるゆっくりとした成長で、ラッキーピエロは函館のNo.1になることができた。

「儲けたいからではないんです。やりたいからやるんです。経営者はだれもが最初は『お客様が喜んでくれるから』『お客様が驚いてくれるから』事業を始めるはずです。ところがそのうちに利益と売り上げにだけに関心が移り、当初の思いが見えなくなっていく例が多い」

 敬老の日には、70歳以上のお客様には50%引き、80歳以上70%引き、90歳以上はタダというサービスを行っている。当日はたくさんのお年寄りが店に詰めかける。その割引率も驚きだが、祝日という集客に絶好のタイミングでこのサービスを仕掛けるのも、一般的なビジネスルールとは相容れない。しかし、王社長は涼しい顔をしてこう語る。

「地元を愛し、地元のおばあちゃん・おじいちゃんを尊敬するという自然の心をそのまま表したかったからです。こうした無茶を私がはじめようとすると、反対する社員の声も出てきます。でも「お返しの法則」というのがあって、私たちがお客様を好きになれば、お客様は必ずお返しに好きになってくれるだろうと信じています。会社はお客様に認められることで存続できるのです」

 ラッキーピエロは、街角清掃やゴミ排出抑制策などの環境問題に関しても長い間コミットし続けている。ボランティアとなった函館市民とともに汗を流す。こうしたつながりが、ラッキーピエロをこれからも、函館という町が生かし続けるだろうことは予想に難くない。地域とともに生きる──同社が全国展開に目を向けることがないのは、この信念に基づいているからだ。


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人口減少が進む函館で、なぜ大手チェーンにも負けず、地域ダントツNO.1になれたのか。またこれだけの人気を誇りながらなぜ函館以外に進出しないのか。地方でがんばる中小企業経営者、管理職・社員なら必読の一冊です。